『子どもが育つ魔法の言葉』
[著]ドロシー・ロー・ノルト
[著] レイチャル・ハリス
[訳]石井千春
[発行]PHP研究所
わたしたち親は、子育てのあらゆる場面で、子どもにわたしたち自身の価値観を教えています。子どもは、自分が何をしたら誉められ、何をしたら叱られるかという体験をとおして、親は何をよしとし何を悪いと考えているかを学ぶのです。子どもの人格形成において、親の価値観は、大きく影響します。
親が忙しすぎたり、子どもに無関心だったりすると、せっかくの子どもの長所に気づかず、優れた部分を伸ばすことができなくなってしまいます。子どもの長所が光るのは、日々の暮らしのほんのささいな出来事においてです。それを見逃さないでほしいのです。
ある日の午後、庭仕事を終えたお父さんは、玄関で七歳のスティーブに迎えられました。スティーブは、人差し指で「シーッ」という仕草をし、「ママがお昼寝してるから」と言いました。
「教えてくれて、ありがとう。いい子だね」。お父さんは、スティーブを抱き寄せて、そう答えました。
こんなふうに子どもを一言誉めることが大切なのです。こんなときの親のちょっとした言葉や仕草を子どもは覚えているものです。
机に向かっていたお母さんは、家の中がとても静かなのに気づきました。五歳の娘の部屋を覗いてみると、レベッカは、お人形を揺り籠に寝かしつけているところでした。
レベッカはお母さんに気づき、顔を上げて微笑みました。お母さんは、投げキスをし、親指を立てて「グッド!」のジェスチャーをしました。
お母さんは、机に戻ると、思いました。人形の「やさしいママ」になった娘はなんてやさしい子なんだろうと。もう一人遊びができるようになったことも、お母さんには嬉しかったのです。
子どもの見せるちょっとした行動を、親御さんは見逃さないでほしいのです。もちろん、忙しくてそれどころではないときもあるでしょう。しかし、子どもに注目することはとても大切なことなのだということを、いつも頭の隅に置いていただければと思います。
子どもは親に誉められた面を伸ばしてゆく
親が子どもの長所を見つけ出し、それを誉めれば、子どもは肯定的な自己像を形成してゆくことができます。子どもは、よいところを誉められれば誉められるほど、よい子になろうと頑張るようになるものです。