『子どもが育つ魔法の言葉』
[著]ドロシー・ロー・ノルト
[著] レイチャル・ハリス
[訳]石井千春
[発行]PHP研究所
子どもが初めて出会う世界は、家庭です。子どもは、家庭生活での両親の姿をとおして、価値観や生き方を学びます。むしろ親が意識していない言動から、子どもは強く影響を受けるのです。
このように、子どもが初めて出会う世界である家庭――それをわたしたち親は、どんな場所にしているでしょうか。子どもにやさしく語りかけているでしょうか。あるがままの子どもを見ているでしょうか。無理に変えようとはしていないでしょうか。子どもを信じ、いい子だと思っているでしょうか。子どもの話に熱心に耳を傾けているでしょうか。
子どもを誉め、励まし、認めれば、家庭はあたたかな場となります。子どもが失敗しても許し、欠点も受け入れることです。子どもを理解し、思いやる気持ちが大切なのです。厳しくしつけなくてはならないときでも、頭ごなしに叱りつけたり、無理やり従わせたりしてはいけません。子どもを信じ、支えることが大切なのです。
子どもが成人して家庭を持ったとき、手本とするのは、自分の生まれ育った家庭です。わたしたち親は、子どもとの間に深い絆を築いてゆきたいものです。そんな絆があれば、子どもが成人して家庭を持ってからはなおさらのこと、祝祭日の家族の集まりに喜んでやって来るでしょう。人と人とのつながりに喜びを感じる人間になるはずです。
家族は持ちつ持たれつ
わたしたちは普通、日々、家族がどんなふうに助け合って暮らしているかをあまり意識することはありません。家庭内の助け合いは、家庭外で人とどのように協力してゆくかの基礎となります。親が子どもの手本となるのと同じように、家庭は社会生活の手本となります。子どもが家庭生活で経験することは、友人関係や学校生活で生かされるのです。洗面所、テレビ、車などを家族でどのように分かち合って使っているか。そのようなことをとおして、子どもは、人との協力や責任というものを学んでゆきます。
感謝祭のご馳走を食べ終わり、みんなで片づけを始めたときのことでした。皿洗い機の中の食器を片づけておくのは、九歳のジョーイの仕事でした。でも、ジョーイはうきうきしていて、すっかり忘れていました。それで、家族みんなが大迷惑です。食卓を片づけていた十一歳のクリスティンは、食器を皿洗い機に入れられないので、台所のカウンターの上に積み上げました。