読みたいトコだけ買える本。
犬耳書店
初めての方へ 記事一覧 無料登録 ログイン
0
-2
kiji
0
0
1198221
0
政治と哲学 日本人の新たなる使命を求めて
2
0
0
0
0
0
0
政治・社会
お気に入りとは?

お気に入りボタンを押すとお気に入りリストにこのページが追加されます。興味のあるページ・気になったページを後から確認するのに便利です。

お気に入り お気に入り
III──社会主義の敗北・資本主義の危機

『政治と哲学 日本人の新たなる使命を求めて』
[著]中曽根康弘 [著] 梅原猛 [発行]PHP研究所


読了目安時間:24分
この記事が役に立った
0
| |
文字サイズ

社会主義が崩れ、資本主義も危機にある────梅原猛



 最近の歴史的事件としてもっとも重大なものは、やはり社会主義国家体制の崩壊でしょう。私は二十世紀のもっとも重要な思想は、マルクス主義であったと思います。


 二十世紀前半には、マルクス主義は世界の知識人にとって非常に魅力的な思想であった。事実その頃は社会主義国家は、いろいろ批判があったにせようまくやっているように思われていました。それが二十世紀後半になって、マルクス主義という思想の根底に、非常に無理な人間解釈があるということが露呈してきて、ついに社会主義国家体制の崩壊を招くことになった。二十世紀前半には光の思想であったはずのマルクス主義が後半には闇の思想となった。これはやはり非常に大きな事件であったと思います。


 中曽根さんがいままでずっと一貫してやってこられたことは、いわばこの社会主義の思想との闘いであったのだといっていいような気がします。それへの危機感から、国家というものに思いを致し、そしてその思いを実現するために政治家になられた。中曽根さんは社会主義は人間を幸福にしないと思って運動をやってこられたのでしょうが、その社会主義社会が崩壊してしまった。中曽根さんの思想は正しかったといわなければいけない。


 ところで、この社会主義体制の崩壊は、そうなるべくしてそうなったといえるのですが、しかしこの社会主義の崩壊が資本主義の勝利であり、資本主義がいまのままで生き残れることにはならないと思うのです。私は、社会主義の崩壊は、資本主義の存続をかえって危うくするのだと考えています。社会主義というアンチテーゼが崩壊して、資本主義は勝利した、歴史に終末が来たのだ、めでたしめでたしと喜んでいていいものかどうか。資本主義は社会主義という敵を失うことによって、逆にその存立基盤がかえって危なくなったのではないか、と私は思います。


 マルクスは資本主義社会は市民の欲望の世界だといいました。資本主義世界とは人間の欲望がむきだしの世界を意味し、必ず貧富の差が生み出され、もっぱら資本家の利潤のみが追求される。日本はバブル経済に酔いしれてむき出しの利潤の欲望がみにくい姿をさらしました。これが資本主義でしたらたまったものではない。もう一度資本主義は、その原点に帰って反省されねばならぬ。


 私はあの憎悪を根拠にしているとしか思われないマルクス主義の人間観およびあの人間の本性を無視していると思われる空想的な社会主義に異議を唱えて厳しい批判をしてきたのですけれども、しかし、資本主義社会は欲望の世界であり道徳の乱れを生み出すというマルクスの批判が、社会主義の崩壊によって完全に間違っていたということにはならないと思う。社会主義が崩壊したいまこそ、このマルクスの批判が生きてくるのではないか。つまり社会主義の崩壊したいまこそ、われわれは、新しい資本主義の理想を自覚的に掲げる必要があるのではないか。


 そんなふうに私は感じているのですが、その辺のところ、どんなふうに考えておられますか。


労農派が日本社会主義の中心だった────中曽根康弘



 私も梅原さんと似たような考えをもっています。いまわれわれは、二十世紀という時代全体を、十九世紀からの連続性をも考慮しながら鳥瞰してみる必要があると思います。おっしゃるように、確かにマルクス主義思想の登場はこの時代に生じた非常に大きな事件だと思います。


 二十世紀全体を振り返ってみると、人類の歴史を通じてこれほど悲惨な世紀はなかったといわなければいけない。二度の世界大戦、あるいは経済恐慌、あるいは五十年近くに及ぶ冷たい戦争があり、植民地よりの独立戦争、民族や種族の抗争などにより、人間が死んだ数の上でも数千万人と人類史上特筆されます。非常に罪の大きい、悲惨な世紀でした。オリンピックやノーベル賞の創設のようなよいこともあるけれども、全体としては悲惨といってよい。これからの二十一世紀は、その延長線上にあってはならないというのが、われわれの願いであるはずです。それではどういう世紀であったらいいのか。


 そのためにまずなすべきは、二十世紀における罪、あるいは欠陥がどういうところにあったのかをしっかり分析し、認識することです。二十世紀には、帝国主義があり、共産主義があり、また資本主義、民族主義がありました。

この記事は役に立ちましたか?

役に立った
0
残り:9914文字/本文:11699文字
この記事を買った人はこれも買っています
      この記事を収録している本
      この本で最も売れている記事
      レビューを書くレビューを書く

      レビューを書いてポイントゲット!【詳細はこちら】

      この本の目次