現実が見えないから愛を錯覚する
すぐに同棲をする女や男は、過保護の甘えた女や男である。適当に相手と楽しんで、うまく利用して自分は別の相手と結婚しようとしている人である。過去のことを隠してシレッとして別の相手と結婚していかれるしたたかな人である。あるいは、この人をうまく射止めてやろうとしてまず同棲し、相手の心理的負担を利用して結婚にまでもち込もうという「玉の輿」志願である。
これはまったく質がわるい。自分の意図をまったく隠しておっちょこちょいの相手をだますタイプである。こうしたタイプの女は同棲にはいる時からさんざん相手に恩を売り、しかも相手から安く見られないような手を打つ。
相手を誘惑してホテルに誘い込んでおいて、「私のことを誰とでも寝る女と思うんだったら、私帰る」などというセリフを必ず吐く。そうして同棲にはいって、次は結婚である。
あるいは「あなたと二人で旅行がしたい」などと言って男の気を誘い、旅行に行く時になって、たとえば、プラットホームなどで、「誰とでも旅行に行く女だと思うなら、私行かない」などと言う。もう何回、何十回とそうしたセリフを使っている女なのに、大人になれない男が真に受けてそれに涙を流さんばかりに感謝する。あとでダマされたと気づいた時にはすでにおそく、妻と夫という関係でもう身動きできない。
大人になれない男は、「私のこと誰とでも寝る女と思うんだったら、私帰る」とか「私はあなたでなければイヤなの」とかいう言葉を聞くと、こんな素晴らしい女が、結婚の約束もしないでよく一緒に寝てくれると思う。そしてそれが彼女の猛烈な愛と信じる。
大人になれない男は、彼女の愛がなみはずれて大きいものと信じる。たいていの女は結婚の約束をしなければ肉体を許さない。彼女はそれなのに僕に許す。それが彼女のケタはずれの愛情と信じる。自分を愛しているからこそ、そんなとんでもないことをするのだ。女の冷たい計算をそのように解釈する。そして結婚の約束とひきかえに肉体を許す女が不潔に見えてくる。そうした女が利害打算のいやらしい女と思えてくる。
それにひきかえ「あー、彼女は……何と素晴らしい」となる。