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「持ち家」という病 不動産と日本人・「これまで」と「これから」の経済学
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経済・金融
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はじめに

『「持ち家」という病 不動産と日本人・「これまで」と「これから」の経済学』
[著]井上明義 [発行]PHP研究所


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 あなたの心のなかには不動産に対する特別な感情が巣食っている。

「持ち家」という病である。


 不動産を絶対的なものと信じ、強い憧憬を抱く。土地神話は崩壊したと言いながら、心底そう思ってはいない。


「地価は再び上昇する」



 投資家は不動産投資を絶対のものと考え、個人は住宅を最高の資産と考える。


 これは熱病と言っても過言ではない。熱病に浮かされている時期は、考えようによっては幸せだ。現実を直視しなくてすむのだから……。


 しかし、今私たちの前に現実の世界が色を伴って現れてきた。竜宮城から帰ってきた浦島太郎のように。


 そもそも住宅に「資産価値がある」というのは間違いだ。


 例えば返済期間三〇年かけて住宅を購入したとする。この場合、土地部分は地価の減少という世間一般の動きから逃げられない。加えて建物部分についてわが国では築三〇年の木造住宅は廃屋と一般に認識されているという事情がある。その結果、三〇年後このような物件は資産価値が大きく減価したものとなってしまうだろう。

「東京五輪が開催される二〇二〇年まで、東京の不動産は上がり続ける」。少し前まで、そんな根拠のない市場観測が真面目に語られていた。内外の多くの投資家が、漠然としたイメージを信じて多額の資金を東京の不動産に投じた。



 しかし、すでに熱病の時代は終わっている。


 早くこのことに気づくべきである。


 日本の経済社会は人口減少によって緩やかに衰退している。今後、住宅に対する総需要が増えることはない。ところが、供給は続く。住宅に対する「投資」環境は悪化し続けるだろう。



 本書は、戦後から現在までの不動産、不動産金融の両面から分析し、将来の不動産、不動産金融を予測しながら、日本人と土地、住まいの「これまで」と「これから」について考察する。不動産金融を通して見た不動産価格の動き、不動産金融が地価に与えた影響などについて考察したものはこれまでにあまり例がないだろう。



 日本人が持ち家志向という熱病にかかったのは戦後のことだ。戦前の都市部では、借地・借家が主流だった。持ち家志向が醸成された理由はいくつかある。


 一つ目は、民間の貸家経営の基盤の破壊である。戦時中からのインフレの拡大や実態を無視した地代家賃統制令の施行によって貸家経営は苦しくなった。その後、戦災による貸家の損壊に加えて戦後は建築資材の不足、地代家賃統制の継続で経営は行き詰まり、挙げ句の果ては収奪的な財産税の徴収もあって、貸家を供給してきた旧来の都市富裕層自体が没落した。借家が消滅すると、日本人の考えが、借家から持ち家へとシフトしていった。


 二つ目は、敗戦直後の住宅政策である。戦勝国、敗戦国ともに激しいダメージを受けたヨーロッパでは、国が住宅の供給に力を注いだが、日本では国を立て直すには第二次産業の復興が急務という政府の方針から、限られた財を石炭と鉄鋼に注ぎ込んだ。当時、四〇〇万戸以上の家が不足していたが、政府は国民に自力で家を建てることを求め、無秩序に家が建てられた。こうしたことが持ち家志向のきっかけになった。


 持ち家志向を含めた不動産信仰を決定的にしたのは、高度経済成長期の地価の上昇である。バブル崩壊までの戦後四十数年間、日本の地価はほぼ一貫して上がり続けた。土地・建物は所有していれば価値が上がり、キャピタルゲインを得られた。地価動向を見ると、四度の高騰があり、これが不動産信仰、そして不動産呪縛を確固たるものにしていったのである。



 現在、不動産をめぐる構造変化が起きている。


 一つ目は、人口減少社会の到来である。少子高齢化が進み、土地の需要が減る。都市部では需要が横ばいになり不動産価格は緩やかに下がるが、地方では人口減少が激しくなり、空き家が増え、不動産価格は大きく下落する。


 二つ目は未利用地化した土地の増加である。市街地、市街化調整区域、農地、いずれの場所でも未利用地が増えていく。また、固定資産税に比した収益を上げることが難しくなっていく。これまでは「農地から宅地へ」がトレンドだったが、宅地から農地へという流れも起きるだろう。土地の利用形態の変化が起き、安くなった不動産を活用する新ビジネスが登場する可能性が高い。


 しかしながら、土地が資産価値を持たなくなることは、必ずしも悪いことではない。


 一つ目は、投資利回りの変化である。土地神話が崩壊し、土地がダブつくなか、不動産経営が変わる。土地のコストが下がり、投資利回りは向上。投資利回り革命が起きる要因は、賃料アップ、もしくは元本ダウンの二つがあり、その両面から考察する。これに伴い土地利用の変化も起きるだろう。


 二つ目は、借家の多様化である。過渡期には家を借りたくても適当な物件がないという現象が起きるが、次第に借家は多様化し、持ち家志向がなくなり、土地付き一戸建ての賃貸が増える。ただし、大家は空室リスクに備える必要があり、賃料はやや上昇する可能性がある。


 すでに、不動産や住宅の呪縛から解放された生き方への模索が始まっている。今後、日本人は戦後の土地神話、持ち家病から解放され、ダイナミックに土地活用のあり方を変えていくだろう。


●本書の登場人物


青年……三五歳、一九八一(昭和五六)年生まれ。東京都在住の会社員

先生……不動産、不動産金融の先生

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