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「持ち家」という病 不動産と日本人・「これまで」と「これから」の経済学
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経済・金融
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第一章 日本人はいつから「持ち家病」にかかったのか

『「持ち家」という病 不動産と日本人・「これまで」と「これから」の経済学』
[著]井上明義 [発行]PHP研究所


読了目安時間:39分
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支払い金額の合計では持ち家が有利?



 青年 実は家を買おうと思いまして、相談に乗ってほしいのです。


 先生 なぜ家を買おうと?


 青年 昨年、待望の子供が生まれたのです。


 先生 それはおめでとう。でも、なぜ賃貸ではなく持ち家なの?


 青年 持ち家と賃貸で比べると、持ち家のほうが生涯にかかる費用が少ないんですよね。この比較表を見てください(図表1「持ち家・賃貸の比較」)。都内の3LDKの家を所有する場合と、同程度の借家に住む場合で、いろいろな費用を比較したものです。支払い金額の合計を見てください。



 先生 持ち家が八六九九万円、賃貸が九四三五万円とあるね。


 青年 持ち家のほうが安いんですよ。家賃の高い物件に住んだら、この差はもっと大きくなります。


 先生 あなたが今、手に持っているのは分譲住宅やマンションの広告かな?


 青年 そうです。「今が買い時!」と書いてあります。ネットでは「これから地価が上がっていくから、今のうちに買っておくべき」という記事も見ました。それに土地や家は最終的には自分の財産になります。それを子供に残せるというメリットもありますね。


 先生 財産ねえ。


 青年 さらにローンの支払いが終わると出費がガクンと減ります。借家の場合は、そうはいかないでしょう。


 先生 確かに死ぬまで家賃の支払いは続くね。


 青年 つまり、持ち家なら年金暮らしの老後も安心ってわけです。まして僕らの世代は年金が全額もらえる保障もないし、いわゆる「下流老人」になってしまったら、家賃の支払いどころではないでしょう。だから、持ち家のほうがいいんです。


 先生 ……。


 青年 あのう……間違っていますか?


 先生 あなたが三〇代で新築住宅を買って八〇代まで生きたとすると、物件の築年数は約五〇年になっているよね。確かに家賃の支払いはないけれど、リフォーム代は発生するでしょ。収入がなくなってからのリフォームや建て替えはきついんじゃないの。それに、これから人口が減っていく日本で、住宅需要が高まるとは考え難い。途中で住み替えたくなっても売れないこともあるんじゃないかな。


 青年 高齢者は借りられないリスクがある以上、持ち家のほうが安心ではないですか?


 先生 ……。


 青年 私は三〇代半ばですが、ここ数年、大学時代の友人や会社の同僚が家を建てたりマンションを買ったりしています。私も「男たるもの家を建てねばならない」と思っています。


 先生 あなたがそう思っているの? 奥さんにそう言われたの?


 青年 そ、それは……両方ですよ。


 先生 あなたのお父さんは持ち家なのかな?


 青年 はい。東京郊外に住んでいます。


 先生 おじいさんは?


 青年 農家の戸建て持ち家です。北関東で農業をやっていました。


 先生 それであなたも「持ち家病」にかかっているというわけか。


 青年 持ち家病? 何ですか、それは?


 先生 持ち家が当たり前だと思っているという病のこと。世間では「持ち家志向」と言われているのかな。持ち家が当たり前だと思っているから、持ち家が有利であるという情報を積極的に拾っているのかな。


 青年 私だけでなく日本人のほとんどは持ち家志向ですよ。「平成二七年度土地問題に関する国民の意識調査【1】」によると、「土地・建物の両方とも所有したい」人は七九・五%もいました。ちなみに、平成五年の同調査開始以降、この質問への回答は常に八〇%前後です。約八割の人は「持ち家がいい」と考えているということです。


 先生 どうして持ち家がいいのかな?


 青年 この調査では、


 一位 「子供や家族に土地・建物の形で財産を残したいから」……五一・九%


 二位 「土地・建物は他の資産と比べて有利な資産だから」………三七・四%


 となっています。やはり土地・建物は財産、有利な資産という意識が強いようです。


 先生 その点についてあなたはどう思っているの? さっきからあなたの発言を聞いていると、まるで住宅販売業者の宣伝文句のようだけれど、本心からそう思っているの?


 青年 いや、本心からかというと……。


 先生 土地・建物の価格が下がっても土地は財産であり、有利な資産だと言えるかな?


 青年 その点には疑問を持っています。数年前まで土地・建物は「有利な資産」と信じていました。でも、もしも土地・建物の価値が下がったら、財産ではなくなってしまいますよね。


 先生 負の資産になることだってあるよ。あなたのお父さんのマンション、おじいさんの所有する土地、建物の価格は、長い目で見ると下がり続けているのではないかな。


 青年 実は、それで相談したいと思ったのです。バブル崩壊を予言し、その後も地価の下落を予言し続けている先生に。さっきのアンケートには続きがあります。「本当に資産なのか?」というと、実はそう思っている人は減ってきています。「資産としての土地」について聞いたところ、

「土地は有利な資産と思う」……………三〇・一%

「土地は有利な資産と思わない」………四一・三%

「どちらともいえない」…………………二一・六%


 という結果でした。「土地は有利な資産」と考える人より、「有利な資産とは思わない」という人のほうが多かった。


 これを見て、どっちなのかと思うようになりました。家を買うことを九割方決めていたのですが、心中に一割くらい「やめておいたほうがいいんじゃないか」という気持ちがあるのです。


 先生 なるほど。


 青年 ちなみに約二〇年前の一九九四(平成六)年の同調査では、

「土地は有利な資産と思う」……………六一・九%

「土地は有利な資産と思わない」………二一・九%

「どちらともいえない」…………………一二・五%


 でした。「土地は有利な資産だ」という人が六割以上もいました。ところが、この約二〇年間で土地は有利な資産と思う人の割合が半分になっています。


 この結果を見て、いったいどっちなのかと悩んでいます。土地は有利な資産でしょうか、そうではないのでしょうか?


日本の住宅は消費財



 先生 質問に答えるには順を追って話す必要がありそうだ。少し時間がかかるけれどいいかな。


 青年 ええ。


 先生 不動産といった場合、おおまかに土地と建物に分かれる。


 まず土地、なかでも住宅地の地価は下がり続けている。この下落は実に二五年間に及んでいる。このことは後で詳しく話そう。


 次に、建物は必ずしも資産とは言いきれない。二〇年で建物の売買価値というか資産価値がゼロになるというのが日本の一般認識だから。このこと自体も問題だけどね。


 青年 日本の、というと海外では違うのですか?


 先生 あなたが買いたいのは新築かな、中古かな。


 青年 新築住宅です。


 先生 「国が公表している既存住宅流通シェアの国際比較」(図表2)というグラフを見てほしい。



 わが国の新築住宅着工戸数は二〇一三年で九八万戸だ。そのうち既存住宅取引戸数は一七万戸弱。全体に占める既存住宅流通シェアは一四・七%になる。


 青年 一四・七%ですか。


 先生 簡単に言うと、住宅を買った人のなかで、中古の家を買った人の割合は一四・七%ということだ【2】。


 青年 中古住宅を選んだ人は一四・七%しかいないということですか?

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