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さまよう民主主義 アウトサイダーの台頭は政党政治の終焉なのか
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政治・社会
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6 コントロールを取り戻す

『さまよう民主主義 アウトサイダーの台頭は政党政治の終焉なのか』
[著]スティーヴ・リチャーズ [翻訳]高崎拓哉 [発行]ハーパーコリンズ・ジャパン


読了目安時間:25分
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 アウトサイダーが台頭するいま、“コントロールを取り戻す”というフレーズが各所から聞こえてくる。しかし“置き去りにされた人たち”というフレーズと同じで、その意味は繰り返し使われるなかであいまいになっている。いったい何から、そして誰からコントロールを取り戻すのか。それは、権力がどこにあり、誰がその権力を行使するのかという重要な問いであり、アウトサイダーが台頭している現状の核となる問いでもある。ドナルド・トランプは選挙戦で、「アメリカはコントロールを取り戻さなければならない」と強調し続けた。ブレグジットを問う国民投票で、離脱の立役者となったドミニク・カミングスは、このフレーズひとつで票が集められることに気づいた。コントロールを手に入れたくない人など、どこにもいない。二〇一七年のはじめ、カミングスは、離脱派の勝利の秘訣を生き生きとつづった文章を著した[1]。そしてスローガンの力について触れた。そのスローガンが、移民問題から大企業幹部の給料アップ(つまり、誰もコントロールできていないか、コントロールしようとしていないように見える課題)まで、多くのテーマと絶妙な形で結びついていたことに言及した。しかし、いかにも中身がありそうに堂々と口にされてきた一方、“コントロール”の意味をきちんと示した人は誰もいない。誰より詳しく語ったカミングスも含めてだ。


 トランプや離脱支持者だけでなく、欧州各地の左派もこの言葉を使った。ギリシャでは、ツィプラス首相が「これでコントロールを取り戻せる」と断言して議会で予算案を可決させようとした。しかしその案は、強力なEUの要求との妥協の産物だった。


 スペインの急進左派政党ポデモスの躍進でも、コントロールは大きなテーマのひとつとなった。政界に波を起こしはじめた時期のポデモスは、欧州中央銀行(ECB)を含むいくつかの機関を、民主主義や議会の力を使ってコントロールするということをメッセージの中心に据えた。


 アウトサイダーの台頭の象徴とも言えるこのフレーズは、どれも同じ意味を持ち、同時にどれも意味を欠いている。アウトサイダーは“置き去りにされた”有権者が自分たちの意見を代弁してほしいと思っている点に注目した。そして代弁者となり、「いまこそコントロールを取り戻すときだ」と声をあげ、かねてからの疑問を改めて持ち出した。世界市場に介入する際、政府はどのような役割を果たすべきか。従来の働き方に頼れなくなった人々をどう守るのか。安価な輸入製品に脅かされ、かつての隆盛は見る影もなくなった伝統産業を守るために介入すべきか。政府がどういった手を打てば、有権者は現状をそれなりにコントロールできていて、政府とつながり、置き去りにされてなどいないと思えるようになるのか。


 助けを求める叫びが生まれた背景には、働き方とコミュニケーションの著しい変化がある。いくつかの仕事は急速に失われていき、その仕事を軸にまとまっていたコミュニティーが崩れはじめた。その余波は政治にも波及し、周囲から隔絶され、豊かさを享受して見える首都の政治家にもたちまち影響を与えた。たとえ彼らが、荒波が押し寄せているのに気づいていなくとも……。アメリカ大統領選挙では、大学教育を受けていない白人有権者のトランプの支持率が、ヒラリー・クリントンの支持率を三九ポイントも上回った。


 トランプは、白人ブルーカラー層の男性からの支持率がヒラリーを五〇ポイント近く上回っただけでなく、大学を出ていない白人女性からの支持率でも、およそ三〇ポイント上回った。なかでも特に優勢だったのが、ウィスコンシン州、ペンシルヴェニア州、ミシガン州のいわゆる“ラストベルト”だった。投票結果を見ると、常に勝敗のカギを握るスイング・ステートと呼ばれる州(浮動票の多い激戦州)のひとつで、戦いがいつにも増して白熱していたことがわかる。ある論客は、思いがけない展開になったのには四万一七六七とおりの理由があると言った。その数字は、二〇一五年のはじめ以降、その州で大規模な工場閉鎖を理由に解雇された人の数だった。トランプは保護貿易主義という、問題への答えを持って見えた。安価な輸入品に関税をかけることで、国内の生産者を守り、世界市場を牛耳る。物価上昇や生活費の高騰が招く賃上げ要求、つまり貿易戦争の余波にどう対処するかは説明せず、激戦州で仕事の不安を抱えて暮らす人々に答えだけ示した。介入して仕事を守ってみせよう。小さな政府や自由市場を信奉するティーパーティーの支持を受けていながら、トランプは介入主義者だった。

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