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(2021/11/26 追記)

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「愚直経営」で勝つ! 経営者9人のチャレンジストーリー
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ビジネス
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第5章 閾値を超えると世界が変わる

『「愚直経営」で勝つ! 経営者9人のチャレンジストーリー』
[著]三村邦久 [発行]PHP研究所


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丸勤食販企業組合


自己資本比率マイナス75%からの出発



 1997年1月、丸勤食販企業組合の3代目理事長を継ぐべく入社した渡井良昌氏を待ち受けていたのは、赤字続きで借金まみれの最悪な経営環境でした。後継者として経営の立場に就いた場合は、良い面も悪い面も含めて、先代経営者の「遺産」を引き継ぐことになります。


 当時の決算書を見ると、売上2・4億円で3300万円の赤字、借入金が売上の約半分に相当する1・2億円弱。そして、経営の健全性を表す代表的指標である自己資本比率がマイナス75%という目を覆うような状況でした。その後も売上は下がり続け、2004年には1・9億円までに落ち込みました。このどん底で父とふたりで死ぬことをも覚悟した渡井理事長は、そこから経営に目覚め、2013年の売上高はかつての3倍、5・7億円にまで拡大し、今や債務超過からの脱却は目前に迫っています。


 渡井理事長は音楽や映像の世界がもともと好きで、映像と舞台演出を主体とするイベント会社を友人とふたりで立ち上げ、7年間経営し、業績を伸ばしていました。ところが、1996年12月、父親が経営している丸勤食販が借金を抱え、実家はすでに消費者金融の抵当として押さえられていることを宣告されました。そこで、イベント会社の経営を創業時からの友人に譲って休職し、1年間の期間限定で、経営を立て直そうと丸勤食販に入社したのでした。



 もう少し詳しくお話ししましょう。渡井理事長が丸勤食販に入社したとき、会社の問題は金銭面だけではありませんでした。社員たちの信じられない振る舞いに、(がく)(ぜん)とする日々が始まりました。


 たとえば、配達担当の男性社員たちは、目を離すと殴り合いのケンカを始め、納品先のチーフに気に入られたいあまり、受注していない商品までも勝手に持っていきました。ある社員は、別の社員の残業代を自分の給料につけ、退職時には法外な退職金を持っていきました。事務の女性社員たちは互いに激しくいがみ合い、涙とヒステリーの嵐。理事長は途方に暮れました。


 会社に出入りする業者もひどいものでした。コンピュータのリース会社は、リース費用をこっそり水増しして契約書を作成し、先代理事長を騙していました。その事実を発見した渡井理事長が訴えると、先代は「もう遅いよ」と泣きながら文句を言うだけでした。先代の人のよさにつけこみ、みなが寄ってたかって甘い汁を吸っていたのです。

「あの頃は会社にいるのが本当に嫌でした。しかし、親父は私を経営者として見ていましたし、理事長代理という肩書きが入社時からついていて、社員からもそう呼ばれていましたので、もう逃げられない状態でした……」


 さらなる試練が襲います。当初は丸勤食販を清算してから、自分のイベント会社へ戻る予定でしたが、パートナーである友人が夜逃げして会社を潰してしまいました。その事実は自宅にかかってきた消費者金融からの電話で知りました。最終保証人だったため「お前が払え」と脅され、弁護士を雇い、個人的に銀行から借金して返済するしかありませんでした。


 当時は現場に出て仕入れも配達もしていたので、朝4時には足立市場に出勤し、一日約16時間を365日働く生活でした。過密スケジュールとストレスが原因で離婚。その年は8月に離婚、11月には父親が他界、告別式の2日後には足立市場内の別の場所へ組合の引っ越しが決まっていました。落ちこむ暇もなく、大きな負の遺産とともに代表の座を正式に譲り受け、膨大な事業承継の手続きに追われながら、1年で最も多忙な年末年始の対応に突入していきました。


 なんとか年を越し、年明けに健康診断を受けると、それまで正常値だった血圧が異常に高い数値を示し、それ以来薬を飲まない限り今も下がることはありません。半年間の極度のストレスの影響は体調をも変えてしまったのです。

「その当時の丸勤食販はとにかくひどいものでした。立て直すすべもわからず、行き場もなく、どこに向かって何を努力していいのかわからない私は、会社を閉めることもできず、足りないお金を借金し続けていました」


 出口の見えないトンネルのなかで、ただただ苦しい時間が過ぎていきました。


お客様のライフラインを守る



 ここで、丸勤食販企業組合の事業について簡単に説明します。現在、この会社は、病院や福祉施設向けにカット野菜、魚の骨なし切身、精肉、精米などの生鮮食材を届ける業務を行う東京都中央卸売市場足立市場内の企業組合です。

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