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(2021/11/26 追記)

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たった4つの言葉が、子どもの能力を引き出す!
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教育
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第2章 自己肯定感を植えつける

『たった4つの言葉が、子どもの能力を引き出す!』
[著]山上敏樹 [発行]PHP研究所


読了目安時間:25分
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見ているようで見えていない



 親なら誰しも「わが子の個性を伸ばしてあげたい」と思うことでしょう。個性を伸ばすためには、まず「わが子がどんな性格で、何に興味を持ち、他の子と異なる特徴は何か、長所がどこなのか」をきちんと把握しなければなりません。把握して初めて、伸ばすべき個性が見えてくるからです。


 しかし、いつもそばにいると、客観的に子どもを観察することができなくなります。あるいは、存在が近すぎて見えていないこともあるでしょう。先入観で見たり、親の欲目から理想の姿を現実だと錯覚しているかもしれません。


 私が美大に入学したとき、授業初日に、教授から「腕時計を外して、机の上に裏返しで置きなさい」と言われました。何をするのかと思っていたら、おもむろに「今、机の上に裏返しで置いた時計の文字盤を、紙に描きなさい」と言ったのです。


 毎日腕にはめ、日に何度となく時間を眺めている自分の腕時計。しかし、いざ「描け」と言われると、文字盤に数字が描かれていたのか、それとも時刻部分が線だったのか、あるいは4カ所だけが数字で残りは点なのか、まったく記憶がありません。何も描けないのです。周りを見渡すと、他の学生も机の上に腕時計を置いたまま戸惑っているようでした。


 そんな学生に、教授は「人は見ているようで、本当は何も見えていません」と、その課題の真意を話し始めました。「絵を描く以上、きちんと観察できるようにならなければならない」と。もしもあの時、「腕時計を観察してから、文字盤を描きなさい」と言われたら、「見る」と「観察する」とは違うのだとは気づかなかったでしょう。皆さんは、自分の腕時計の文字盤を思い出せますか?


 子どもに対しても同様で、見ているつもりで、本当は何も見えていないかもしれません。「親なのだから、毎日接しているのだから、子どものことはよく分かっている」と思ったら大間違い。案外、人から指摘されて「そんな一面があったんだ」と思うこともあるものです。

「個性を伸ばしてあげたい」と思ったら、分かっているという先入観を捨てて、わが子をもう一度冷静に観察することから始めなければなりません。


 また、見る角度を変えたら、違った個性が見えてくることもあります。私は趣味のひとつとしてバードカービングをしています。遊園地アトラクションのデザインを担当していた頃、ホームセンターでバードカービングのハーフメイドキットを見つけたことがきっかけでした。子どものときから空を飛ぶ夢を抱いていたので、鳥の機能美にすっかり魅了され、迷わず購入したのです。


 何体も彫るうちに、道具も本格化していき、自宅を新築する際にはアトリエを設け、さまざまな賞もいただき、とうとう日本バードカービング作家トップ20人に選出していただくまでの腕前になりました。SNSで作品を発表するうち、私のファンも増えていったのです。


 バードカービングの展示会を行っていたある日、当番の私が会場に座っていると、視覚障害の方と介添え者がいらっしゃいました。その様子を眺めていると、展示作品を眺めていた介添え者が思わず「すごい、山上さんの作品が展示されている」と言ったのです。すると、視覚障害の方が「私も触ってみたいな」と遠慮がちにつぶやきました。もちろん、会場のそこかしこに「作品には手を触れないでください」と書かれています。


 ふたりのやり取りを聞いた私は、彼らの近くへ行き、「私の作品でよかったら、どうぞ触ってください」と声を掛けたのです。彼は時間を掛けてゆっくりと触れ、その後、じっと考え込みました。もしかしたら、触れただけでは分からない箇所もあるのかと思い、「どうされましたか?」と尋ねると、「触った情報を、頭の中で整理する時間が欲しいのです」と答えたのです。


 ひとつにつき5分ほどの時間を掛けて触り、考え込んでは次の作品に移る。これを繰り返していくうち、魚をくわえているカワセミの作品に行き当たりました。実は、魚には無色透明の点が付いています。考え込むようなそぶりの後、彼は「このプチュッとしたものは何ですか?」と質問しました。私は「これは水滴です。水からくわえあげられた魚を表現するために、無色透明な樹脂で水滴をつくって、魚に貼り付けました」と丁寧に説明したのを覚えています。


 私の作品は10点以上展示されていましたから、彼は1時間以上かけて全作品に触れていたことになります。翌日、その方からメールで、1点1点の作品に対する感想が送られてきたのです。私は、あれだけの量をきちんと記憶していたことに感動しました。

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