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(2021/11/26 追記)

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京都しあわせ食堂
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第四章 ボリュームたっぷり「洋食堂」

『京都しあわせ食堂』
[著]柏井壽 [発行]PHP研究所


読了目安時間:29分
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京都の洋食



 フレンチでもイタリアンでもなく、あくまで洋食。和食と並んで京都が世界に誇る名物料理といってもいいだろう。ナイフ・フォークではなく、お箸で食べる洋食。


 京都で洋食が発展した理由のひとつに()(がい)の存在がある。


 舞妓ちゃんを引き連れての〈ご飯食べ〉、お座敷遊びの前の旦那衆の小腹満たし、いずれにも洋食は欠かせないものとなった。


 一方で京都は職人の街でもあり、長時間労働を強いられる職人のスタミナ源として、洋食ほど重宝された料理はない。更に京都は長く学生の街でもあり続け、血気盛んな若者たちの胃袋を満たすのにも、洋食は最適な料理だった。

「洋食堂」とでも呼びたくなる店は、どちらかといえば後者のほう。職人たちや学生に人気なのは、安くてボリュームたっぷり。もちろんそれが美味しくなければならないのは当然のこと。


 住宅街、学生街、そしてビジネス街。意外な場所に潜んでいることもある洋食堂。京都旅のアクセントになるのは間違いない。


「ますや」

小さな小さな洋食堂

▼▼▼MAP〓〓 


(たか)(くら)通の奇跡〉。この店で食事をする度に、僕の頭には必ずこの言葉が浮かぶ。


 奇跡とは大げさな、と思われるだろうが、京都市内のあちこちで洋食を食べてきた僕が言うのだから間違いない。


 高倉通の(まつ)(ばら)通から少し北へ(あが)った辺り。ビジネス街でもあり、住宅街でもあるという、微妙な立地。人通りが多いような場所ではなく、しかし(へん)()な場所ではない。

〈お弁当〉という赤い(のぼり)と、黄色い日よけテントが目印の「ますや」。店の入口も、店頭のサンプルウィンドーも少し奥まったところにあるので、気づかずに通り過ぎてしまいそうに控えめな店構え。何度もこの前を通っていながら、テークアウト弁当の専門店だと思いこんでいた。


 あるときハンバーグ弁当を求め、出来上がるのを待っていると、中に客席があるように見え、訊ねてみると、カウンターだけだが七席あるとのこと。しばらく経ってからランチタイムに行ってみた。


 昔風に言うならコーヒースタンド。狭い店の中にL字型のカウンター席が(しつら)えられ、その中のキッチンで料理が作られる。


 オープンキッチンスタイルだが、(ちゆう)(ぼう)を囲むようにして座席が作られているといったふうで、料理が出来上がっていく様子を間近にできる。


 僕はこういう店では基本的にあれこれ話したり、訊いたりはしないので、あくまで推測だが、料理を作るのは主人で、サービス係担当は奥さんだろうと思う。




 日曜日と祝日は定休だが、それ以外の日は朝十一時から夜六時半まで(土曜日は五時まで)の通し営業。そのあいだずっと、ご夫婦は狭いキッチンの中で顔を突き合わせて仕事をしているわけで、よほど仲がよくなければ務まることではない。


 息の合った夫婦で作る料理がまずいわけがない。そして余計な人件費がかからない分、ぎりぎりまで価格が抑えられているのも実にありがたい。


 人気のコロッケセットは、揚げたてコロッケが二個付いたプレートランチ仕立てでライスも付いて五百円でお釣りがくる。


 カツとじ丼も、昔ながらのスパゲティもどちらもワンコイン以下の価格だが、味はたしかで、倍の値段が付いていたとしても納得するほどだ。


 エビフライ、ビフカツ、カレーライスなどなど、何を食べても美味しいが、僕はたいていオムライス。


 狭いキッチンからは、フライパンがコンロの上で激しく動く音が響き、やがて()(えん)の銀皿に盛られて出てくるオムライスは、とても美味しい。




 ふわとろなどという軟弱なものではなく、薄焼き卵できっちり巻かれたオムライスの上にはケチャップソースがどろり。しっかりとケチャップライスが炒められているから、最後まで熱々のまま食べられるのも嬉しい。味付けもボリュームも僕にはジャスト。それでいてワンコインでお釣りがくる。テークアウトも悪くはないが、すぐ目の前で作り上げられたオムライスを、間髪入れずに食べるのが洋食堂の醍醐味。わずか五十円とは思えないほどていねいに作られたコンソメスープと一緒に味わうと至福のひとときが訪れる。


 京都で一番美味しいオムライスは、と聞かれたら迷わずこの店をお奨めする。それでいて良心の塊のような価格。これが奇跡でなければいったい何なのだ。


「レストラン 辻川東店」

レトロクラシックな洋食堂

▼▼▼MAP〓〓 



 地下鉄烏丸(からすま)線、()(じよう)駅のほど近く、竹田街道沿いにある洋食店「レストラン 〓川東店」。食堂と呼ぶには、はばかられるようなクラシックな洋食屋。


 かつて京の街には、こういうスタイルの洋食屋があちこちにあった。店の内外に、どこかしらヨーロッパを思わせる設えがあり、洋食と呼ぶより欧風料理と言いたくなるような店。お箸ではなく、紙ナプキンできちんと巻かれたナイフ・フォークで食べることを基本とする。


 相当古くからあるのだろう店は、表が煙草屋を兼ねていて、煙草屋の奥にレストランがあるといった構え。このレトロ感を(たの)しみながら店に入ると、同じく店の中も、古き()き時代を思い起こさせる設えだ。




 洋食全般、たいていのものはメニューにある。


 この店で僕が強くお奨めするのは、シーフードのフライ。

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