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(2021/11/26 追記)

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鉄道の聖地 京都・梅小路を愉しむ
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旅行
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はじめに

『鉄道の聖地 京都・梅小路を愉しむ』
[著]芦原伸 [編]天夢人 [発行]PHP研究所


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 鉄道が今、人気である。


 思えば、日本人にとって鉄道は単なる機械、あるいは交通手段の一つではなかった。


 鉄道はいつも日本人の身近な生活に寄り添って走ってきた。


 時代を振り返ってみよう。


 明治時代、日本の近代化を支えたのは鉄道だった。


 蒸気機関車はその時代、文明の象徴であり、全国津々浦々に鉄道網が張り巡らされたのは、日本の産業化の歩みと一致している。


 大陸への野望も鉄道が象徴していた。大平原に夕日が落ちる雄大な満州を駆け抜けたのは流線形をした時代の寵児、満鉄「あじあ号」だった。日本は西洋列強に負けまいと帝国主義への道をひたすら走った。その頂点でアメリカと戦い、奇跡の国、神の国は消滅した。


 敗戦後、黙々と日夜働き続けたのも鉄道であった。人と物資を運び、ひたすら焼け跡を蒸気機関車は煙をあげて走り続けた。力強いその姿は傷心した日本人を励まし、明日への希望をつないだ。


 やがて電気の時代、家庭では三種の神器(テレビ、冷蔵庫、洗濯機)が新しい文化生活をもたらしたが、東海道線の電化にともない登場したのは電車特急「こだま」だった。「こだま」は東京~大阪間を8時間で結び“夢の超特急”となった。さらに高度成長の時代、日本の夜を走ったのはブルートレインだった。九州行き夜行寝台特急「あさかぜ」や「富士」「さくら」が出張族を乗せて、東海道、山陽道の夜をひた走った。


 新幹線の登場は日本が世界の檜舞台に進出する国際化の第一歩だった。


 1964(昭和39)年の東京オリンピックと新幹線は戦後20年の苦難を経て、日本人が勝ちとった成長経済の夢の実現だった。さらに続いた大阪万博はその総仕上げだ。日本各地から会場へ、波のように観客がつめかけ、その入場者数は6400万人にのぼった。日本人の2人に1人は万博に参加したことになる。


 一方で、万博ブームは日本人がはじめて“旅を楽しむ”原点ともなった。その後の「ディスカバージャパン」は時代の気分を映していた。鉄道は輸送者から旅の演出家に衣替えしたのである。


 バブル経済がはじけ、不透明な、沈黙の20年間が続いた。経済は低迷し、戦争とテロが世界を席巻した。産業優先、資源開発、熱帯雨林の減少により地球は温暖化し、環境意識が高まった。


鉄道の時代がやってきた



 そしてふたたび鉄道の時代である。


 大量消費型の生活は終わり、今は循環型、環境型の生活が見直されている。


 鉄道はそうしたスローライフの象徴となった。鉄道はクルマのように消費型ではなく、環境型の乗り物である。しかもCO〓の排出量は、自家用車の9分の1、安全に、しかも大量輸送できるのは飛行機の比ではない。


 鉄道は対話できる唯一の乗り物だと思う。


 そこには友人たちとの対話、あるいは流れゆく風景との対話、またひとり過ぎ去ってゆく自分との対話がある。


 車窓風景は流れる画廊である。


 緑なす山々、清らかな渓流、穏やかで美しい里山を眺めながら、しかも弁当や酒を嗜みながら旅ができる乗り物はほかにあるだろうか?


 かつて一部のマニアしか興味がもたれなかった鉄道は、今は明るい“鉄ちゃん”“鉄子さん”の時代を迎えている。乗り鉄、撮り鉄、音鉄、呑み鉄、メカ鉄など興味分野もすそ野を広げ、ママ鉄、子鉄がホームで列車の写真を撮る風景が日常化している。


 2015(平成27)年、北陸新幹線が金沢まで延伸し、さらに2016(同28)年には北海道新幹線がいよいよ開業する。いつの世も鉄道は日本の社会の反映だったが、本年は“鉄道の年”になるかもしれない。


 京都鉄道博物館がオープンする。


 長らく梅小路蒸気機関車館として、蒸気機関車の歴史的な価値を存続してきたが、それが拡充され、よそおいもあらたに総合鉄道博物館として登場する。京都という国際観光地が舞台だから、大げさにいえば、日本の“鉄道の聖地”の誕生である。


 新橋~横浜の“汽笛一声”以来、144年間走り続け、進化した鉄道(機関車、列車、技術)の集大成がここにある。


 鉄道の時代への熱い思いがここに結晶されている。


二○一六年 早春

芦原 伸



※記載の情報は2015年12月現在のものです。京都鉄道博物館開業前の取材時の情報に基づいていますので、一部変更になる場合もあります。

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