『とらわれない。ゆるがない 人生を豊かにする「菜根譚」の言葉』
[著]守屋洋
[発行]PHP研究所
心が充実していれば、人生は楽しい
精神が充実しているときは、粗末な布団にくるまっていても、天地の生気を吸収することができる。
心が充足しているときは、質素な食事をとっていても、人生の淡泊な味わいを楽しむことができる。
(後集・八八)
極端な貧乏も困るが、あれもこれもと高望みしてもキリがない。食べていければいいやと居直ることができれば、気持ちもずいぶん楽になる。
足ることを知れば、心に余裕が生まれて、ゆったりとした気持ちで人生を味わうことができるかもしれない。
友は得がたいもの。古い友人を大切にせよ
古くからの友人とは、つねに新しい気持ちでつき合いたい。
人に知られたくない機密事項を処理するときは、とりわけ公明正大な態度であたりたい。
現役を退いたお年寄りには、以前よりもいっそういたわりの心をもって接したい。
(前集・一六五)
友は得がたいのである。だから古い友人を大切にせよということだろう。また、疑惑を招くようなことはするなというのは信頼にかかわる問題であり、年寄りにはいたわりの心をもって接せよというのは思いやりにかかわる問題である。
これらもまた社会人の基本的なたしなみと言ってよい。
過失があったら、
ためらわずに忠告するのが友人である
肉親に不幸が起こったときは、冷静に対処すべきである。けっしてとり乱してはならない。
友人が過失を犯したときは、懇切に忠告すべきである。けっしてためらってはならない。
(前集・一一三)
肉親の不幸にさいしては、むしろ控え目な表現のなかにこそ真情が吐露されているということかもしれない。
また、友人が過失を犯したとき忠告をためらったのでは、もはや友人とは言えないということであろう。ただし、あまりしつこくすると、逆効果になる恐れがある。それとなく遠回しに忠告し、それで効果がなかったら、しばらく様子を見るくらいの配慮が望まれるのである。
利益にまっ先に飛びつくな。
善行は人に後れをとるな
利益は、人より先に飛びつくな。善行は、人に後れをとるな。
報酬は、限度を越えてむさぼるな。修養は、できるかぎりの努力を怠るな。
(前集・一六)
この四つの戒めに反したのでは、社会人としての信頼にかかわってくるということだろう。
まず利益と善行であるが、自分のためになることなら目の色を変えて追い求めるが、人のためになることには見向きもしないとあっては、信頼など得られる道理はない。
また、「報酬をむさぼるな」とは、アメリカあたりの経営者に言いたいことだが、近年、日本にもこういう経営者がふえてきているようだ。