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競争優位を実現するファイブ・ウェイ・ポジショニング戦略
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ビジネス
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CHAPTER2 ファイブ・ウェイ・ポジショニングという新たなビジネスモデル

『競争優位を実現するファイブ・ウェイ・ポジショニング戦略』
[著]フレッド・クロフォード [著] ライアン・マシューズ [監修]星野佳路 [発行]イースト・プレス


読了目安時間:32分
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消費者からも、仕入れ業者からも好かれる小売店



 さて、実際にうまく機能しているファイブ・ウェイ・ポジショニングとは、どのようなものだろうか? 次に紹介する例について考えてみてほしい。本書の執筆中、執筆者の1人ライアンは、アイルランドの首都ダブリンの中心から少し離れたところにあるスーパーマーケット、スーパークインの通路を歩いていた。これは、そのときのエピソードだ。


「いろんな業界の幹部の人たちから、『世界中からサービス重視の会社を1つ選ぶなら、やっぱりスーパークインじゃないかな』と聞かされていた。だからアイルランドでは、スーパークインの店の中を歩いてみることにした。私はカートも押さず、買い物かごも持たず、会社の偉い人にエスコートされてもいなかった。スーパーにいる男性客にありがちな迷える子羊みたいな顔をして、ただ店の中をうろうろする1人の客にすぎなかった。


 チーズ・コーナーを通ると、商品を補充していた若い店員が声をかけてきた。『アメリカの方ですか?』『そうだけど、何でわかったんだい?』『靴ですよ。靴を見たら、すぐわかるんです』と、彼女は言った。店員は自己紹介をして、『お客さまのお名前は? どうしてうちの店に来てくださったんですか?』と尋ねた。普段の姿をリサーチしたいから、『出張でアイルランドに来たんだよ。できるだけいろんなものを見て、この国の人たちがどんなふうに暮らしているか知りたいんだ』と、私は答えた。


 すると、『アイルランドのチーズはお好きですか?』と彼女は尋ねてきた。アイリッシュ・チーズはよく熟成されたタイプを何度か口にした程度だ、と答えると、『ライアン、どんな種類のチーズがお好みですか?』と聞くので、『ブルーチーズ』と思わず答えていた。『キャッシェル・ブルーを食べたことは?』と言うので、『ないね。少なくともフレッシュなのは、ない』と答えると、何のためらいもなく、店員はケースに手を伸ばしてチーズを取ると、ナイフを取り出してさっとパッケージを破り、中身を試食させてくれた。

『もう少し匂いがキツいのがお好きなら、これはどうでしょう?』と、彼女は2つ目のチーズを取り出した。さらに3つ目、4つ目、5つ目、と取り出していく。私たちのまわりに、そのうち小さな人だかりができた。アイルランドでは、楽しい会話にはよく人が集まってくる。

『こちらは、アメリカから来たライアンさん。出張でいらしていて、今アイルランドのチーズを勉強中なんです』と、店員は声の届く場所にいる全員に声をかけた。『これと、あれをちょっぴり味見してもらったんですよ。みなさんも、ちょっと食べてみませんか?』。あっという間に、チーズを食べる人たちの輪ができあがった。気がつけば、全員がお互いの名前と職業を知っていたのだ。私は、アメリカに住む彼らの親戚の話を聞き、彼らは、アイルランドにいる私の家族の話を聞いた。


 チーズと店は重要な要素ではあったけれど、それがみんなを一つにしたのではない。伝説の──伝説になるのもうなずける──アイルランド人の『もてなしの心』ですらなかった。それは、チーズを補充していた店員の力だった。彼女は、1人の人間としての私に目を留め、何かに気づき、その観察を温かいつながりを築くきっかけにした。それを、この世で一番おいしいブルーチーズが後押ししてくれたのだ」



 ここでおしまいなら、「いい話だね」で終わるところだが、この話には続きがあった。その週の後半、ライアンは、キャンベル・ビューリー・グループの会長であるパトリック・キャンベルと一緒にいた。キャンベル・ビューリーは、アイルランドに本拠を置く高級紅茶とコーヒーのメーカーで、レストランから喫茶店、売店(キオスク)に至るまで、さまざまな外食店の経営もしている。2人は、紅茶とコーヒーに関するキャンベルのマーケティング戦略について話し合っていた。

「どこで売るかには気をつけているんだ」と、キャンベルはライアンに言った。「スーパークインに置いてもらえるのは、とてもありがたいんだ。スーパークインで売られていることが、わが社について語っていると思うから」。キャンベルが言わんとしていることは、手に取るようにわかる。スーパークインは、たしかにサービスで市場を支配しているが、実は商品でも差別化に成功していた。


 スーパークインは期せずして、ファイブ・ウェイ・ポジショニングの原則を体現していたのだ。アイルランド、オランダ、ベルギー、イギリス、カリブ海、フランスを訪れて、確認できたのは、ファイブ・ウェイ・ポジショニングが、アメリカだけでなく世界に通用する、ということだった。


 それは、なぜなのだろう? 売り手の視点で言えば、消費者と企業との関係は、19世紀の田舎の雑貨店でも都会の店でも、21世紀のネット市場でもそう大きく変わっていない。つまるところ、田舎の雑貨店主は客のすべてを知っていて、ツケで売ることも多く、家まで配達することもよくあった。これらはすべて、今日、多くのネット企業が目指していることと基本的には同じだ。


5つの要素の新たな意味合い



 では、物事がそれほど変わっていないなら、なぜ消費者は納得いかない様子なのだろう? 答えの1つを挙げよう。取引の基本構造(価格、サービス、アクセス、商品、経験価値)は、昔と変わらないようだが、基本構造の意味(各要素の具体的な意味合い)が、根本的に変わってしまったのだ。


 これがどういう意味か、5つの要素を1つずつ見ていこう。


価格の神話:企業は安さを誇るが、消費者は公正な価格を評価する



 私たちが最初、調査の回答者がどうかしてしまったに違いない、と考えた理由の1つは、すべての企業にとっての警鐘となるはずだ。電話調査でも一対一のインタビューでも、消費者は──所得水準や住んでいる地域、学歴にかかわらず──繰り返しこう言った。

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