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競争優位を実現するファイブ・ウェイ・ポジショニング戦略
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ビジネス
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CHAPTER5 アクセスで市場を支配する

『競争優位を実現するファイブ・ウェイ・ポジショニング戦略』
[著]フレッド・クロフォード [著] ライアン・マシューズ [監修]星野佳路 [発行]イースト・プレス


読了目安時間:43分
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アクセスは立地がすべて、ではない



 アイルランドで私たちは、ダブリンの「ロック・ハード」たちに出くわした。ユニークなヘルメットで人目を引く彼らは、アクセスのマーケティングをこれまでにないレベルへと引き上げた「ビジネスパーソン」の集まりだ。ロック・ハードたちは、交通量の多いダブリンのオフィス街をパトロールして、イライラしているドライバーたちを、狭い駐車スペースへと無造作に案内していく。そして、一輪車用と見まがうようなスペースに車を押し込もうと頑張るドライバーに、「ハンドルを切れ(ロック・ハード)、今だ」と声を上げる。


 ドライバーがぐったりしつつも、歩道脇のとりあえず安全な場所にどうにかこうにか車を停めると、ロック・ハードたちが近づいて言う。「ほら、ここなら安心だろ?」絵に描いたような気遣いを見せる。「おれが見張っといてやるよ。まあ、男が時間をかけて見張るんだから、ただってわけにはいかないけどな。それでも、おたくも知っての通り、昔ながらの町でも昔と違って物騒だからさ」


 ロック・ハードたちは、アクセスという要素の2つの力学──物理的アクセス(駐車できる、もしくはすべき場所)と、心理的アクセス(帰りは車に乗れないかもしれないという心配)──をうまく組み合わせ、日常的なサービスを市場に提供している。


 対消費者ビジネスは、ロック・ハードたちに学べそうだ。長年にわたって、企業はアクセスの定義を、不動産業界でおなじみの「とにかく立地です!」の一言で片づけてきた。実際、アクセスと言えば、かつては立地がすべてだった。だからマクドナルドは、シカゴからシャンゼリゼ通り、ケンタッキー州ルイビルからロンドンに至るまで、世界中の街角に出店しているのだろう。


 至るところにガソリンスタンドがあり、スーパーに必ずATMがあるのも、同じ理由からだ。どこへ行っても、喫茶店やアイスクリームショップ、ネイルサロンをやたらと見かけ、ショッピングモールにも量販店にも、ナッシュビルからニースまで、必ず同じ店がセットで入っている。ザ・ボディショップ、フットロッカー、ギャップ、リミテッドなど。


 ごく最近では、ガソリンスタンドとコンビニは方針を変え、住宅地や中核都市に進出している。銀行は、全米の住宅街や郊外の人通りの多い場所に、支店を構えるようになった。そして、スターバックスやダンキンドーナツ、CVS/ファーマシー、ウォルグリーンといった企業は、大型オフィスビルや小さなショッピングモール、大通り沿いなど「消費者がたまる」場所を独り占めしている。「立地がすべて」という考えに、しがみついている証拠だ。


 だが、今日の消費者に支持されているのは、アクセスの新たな定義のほうだ。つまり、心理的なアクセスを重視した定義である。目指すのがスーパーでも、銀行の支店でも、車の販売店でも、駐車場が広いかどうかや、右折で入れるかどうかより、店内をスムーズに首尾よく回れて、探しものが見つかる、と感じられることをアクセスと呼ぶようになっている。


 とはいえ、消費者が不便な場所を好んでいる、というわけではない。結局のところ、アクセスとはポーカーゲームの参加費のようなものなのだ。行きにくい場所にあれば、ゲーム(ビジネス)には参加できない。だが、今日のアクセスは、多面的な要素であり、土地や建物をはるかに超えた、さまざまな意味を持っている。今や、立地がすべてではない。立地は、差別化というモザイクを成す1ピースにすぎないのだ。


 この変化には、2つの大きな理由がある、と私たちは考えている。1つは、私たちがおおむね車社会で暮らしていること。ほしいものを手に入れるためなら、多少の距離は移動できる備えも意欲も能力も持っているのだ。2つ目は、インターネットのおかげで、いつでも、どこでも、何にでも、たいてい手が届くようになったこと。


 今日、アクセスとは立地というより、消費者が望むときに、望む場所で、なるべく邪魔が入らず面倒もなく、企業とやり取りできるようにすることを指している。たとえば、銀行のアクセスなら、支店を開設するだけでなく、利用しやすいATM網を築くことを意味している。小売業者なら、顧客に「買いやすさ」を提供すること。もしくは、店の地図が頭の中にざっと描けるようにすることだ。要するに、簡単で便利でなくてはいけない。買い物客がほしいものをさっと見つけられて、店を自分のニーズに合わせて使いこなせるくらいに。


消費者は、「さっと買える」を求めている



 こうして新たなアクセスの形が浮上してきた背景には、通販が復活し、テレビショッピングの人気が高まり、オンラインショッピングが着実に伸びてきたことがある。アクセスで市場を支配する新興企業の代表と言えば、アマゾンだろう。


 同社のウェブサイトは見つけやすく、サイト内をスムーズに移動できる。しかも、付加価値の高い多彩なサービスを展開し、アクセスの新たな定義が、買い物の枠に留まらないことを示している。アマゾンは、書籍やCDへのアクセスを提供しているだけでなく、ほかの消費者のレビューを掲載する、などのサービスを通じて、コミュニティへのアクセスも提供しているのだ。


 現実の世界では、ダラー・ジェネラルが、価格で市場を支配する一方、アクセスの新たな定義をうまくキャッチし、約5000店舗の店内の案内(ナビゲーション)に注力している(第3章ケーススタディ参照)。「さっと入れて、さっと出られる店でなくてはいけません」と、最高総務責任者を務めるボブ・カーペンターは言う。

「うちの店の面積は、600~700平方メートルと決めています。理由はね、入り口に立ったお客さまが、店のすべてのパートを見渡せなくてはいけないからです。視界をさえぎるものがなければ、ほしいものが見つかって、さっと買ってさっと出て行けるんですよ。だから、うちでは目の高さを超える位置には、什器を設置しません。小さな店で、目の高さより上に什器があると、お客さまにはごちゃごちゃして見えるんです。ほしいものが見つからなければ、うろうろと店のあちこちを探し回ることになります」


 アクセスとは、買い物客が探しものを見つけること、と心得ているダラー・ジェネラルは、全店舗で共通の「地図」をつくり上げた。「入ってすぐ左手に、保存のきく食品を置いています」と、カーペンター。「こういった商品は、さっと手に取ってもらえます。みなさんたいてい、こういうのを1つ買いに来られて、それを手に取ったら、洗剤とか掃除溶剤とか、ペーパータオルがほしくなるんですよ。だから、そういう商品は奥の壁際に並べています。それから、デオドラントとか歯磨き粉も必要でしょうから、それは正面から見て右側の手前のほうに置いています。


 ですから、歯磨き粉を買って帰るには、食品と家庭用品のコーナーを通らなければいけませんが、もし肝心の2つだけを買いたい、というときは、手前のほうでさっとそろえることができるんです。そう、保存食品は左側手前に、歯磨き粉は右側手前に並んでいますからね。大事なことは、うちのどの店に来ていただいても、商品がすべてまったく同じ位置にあることです。みなさん場所をご存知だから、入ってきた途端に、ほしいものを見つけられるんですよ」


 まったくビジネスモデルは異なるが、アムウェイも、アクセスを差別化のポイントにしている。消費者はアムウェイで、たいていのもの──保険、自動車、電化製品、家具、食品、その他の消費財──が買える上に、家を一歩も出ることなく届けてもらえる。アムウェイのビジネスモデルは、消費者同士、ご近所同士のコミュニティに根ざしている。


 顧客になってくれそうな人に対面販売をする、というスタイルで知られるアムウェイは、月収を増やしたい、新しい仕事を見つけたい、と望む一般市民を販売員にしている。そして、家庭用洗剤やクレンザー、パーソナルケア商品を扱う、便利で利用しやすい小売業者として名を馳せている。

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