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競争優位を実現するファイブ・ウェイ・ポジショニング戦略
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ビジネス
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監修者あとがき

『競争優位を実現するファイブ・ウェイ・ポジショニング戦略』
[著]フレッド・クロフォード [著] ライアン・マシューズ [監修]星野佳路 [発行]イースト・プレス


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星野リゾートケーススタディからわかる

ファイブ・ウェイ・ポジショニングの有用性



 私は、コトラーの講演会で本書を知った。その当時、私は他の多くの経営者と同じように、コモディティ化と資源の制約への対処方法について悩んでいた。あとがきでは、私が本書を読み、いかにファイブ・ウェイ・ポジショニングを経営に反映させ、これらの難題に挑戦しているかをご紹介したい。



 本書に出会う以前、私が考えあぐねていた問題が他にもあった。それは、サービス業にとって商品とは何であるのか、というものだった。多くのポジショニング理論では商品とは物質的な製品であり、商品の周辺における顧客へのケアをサービスと呼んでいる。しかし、ホテル業においては、サービスそのものが商品であると考えるので、その周辺を含めてポジションニング理論を当てはめることが難しいと感じていた。ファイブ・ウェイ・ポジションニングにおいても同じ課題がある。商品、サービス、経験価値は3つの違った要素であり、それはサービス業においては具体的に何なのであろうかと考え込んでしまった。


 長く考えた結果、私の解釈は以下の通りとなった。


 ホテル・リゾートのサービス業においては、商品=施設、経験価値=サービス内容と質、サービス=カスタマイゼーション、とすることにした。つまり、商品とはホテルや旅館の外観・内観の居心地の良さ、機能性、そしてデザインの斬新さなどハード面の内容であり、経験価値は「リラックスできた」「楽しかった」「美味しかった」とお客様に思っていただけるソフト面とし、サービスは、個別の顧客に合ったサービス内容のカスタマイゼーションとした。こう考えて改めて本書を読んでみるとスッキリ理解できる面が多い。


 本書を読んで最も衝撃を受けたのは、アクセスという概念が単独で競争力維持の要素になりうるという事実だ。それまでも多くの経営書で、商品、価格、サービス、経験価値などは、経営の要素としてそれらの重要性は訴えられていた。たとえば、ドン・ペパーズは『ONE to ONE マーケティング 顧客リレーションシップ戦略』[ダイヤモンド社]にて、消費者1人ひとりに合わせた商品・サービスを提供することの意義を唱えている。しかし、アクセスを企業競争力維持において重要な要素としてあつかった理論をそれまで目にしたことはなかった。コトラーの講演ではアクセスをEase of Accessと定義していた。つまり、「買い易さ」という意味だ。買い易い環境が企業競争力を維持するという発想が私には新鮮であった。限られた資源の中で、脱コモディティの戦略をたてようとしていた時に、私はアクセスをレベルⅡ、つまり差別化の要素にした。ホテル業界におけるアクセスとは「予約の容易さ」ということである。


 ファイブ・ウェイ・ポジショニング理論に照らし合わせて、星野リゾートの経営では、経験価値を第1位の要素とし、アクセスで差別化をはかり、商品・サービス・価格においては業界水準を維持するということを考えてみた。どうやってそれを達成するのかは別として、この理論を信じるならば、これによりコモディティ化に埋没することなく、競争力を持続できるはずなのである。これは私にしてみると大変ありがたい出発点であった。普通はどういう状態にしたら競争力を維持できるのかわからないから困っているのであり、そういう厄介な心配をすることなくスタートできる。そうなると持てる資源を全て集中して、第1位の要素と差別化ポイントを作り上げ、同時にその他の3要素のレベルを一定に保つ、という選択と集中の方向性が見えてきたのだ。



 経験価値を第1位の要素に選んだということは、この分野で市場を圧倒しなければならない。ホテル・リゾートにおいて、経験価値とはソフト力、いわゆるサービスの質である。サービス業においてサービスの質が重視されるのは当たり前であり、経験価値を選択するのは王道ではあるが、この要素でどうやって競争優位を維持するのかという点が難しい。現時点で、競合他社と比較して星野リゾートの競争力は、優秀な人材のリクルーティング力とフラットな組織と呼んでいる独特な組織文化だ。


 経験価値を第1位の要素に選択することで、リクルーティング力と組織文化がより重要な位置づけになるだけではなく、経験価値を高めるための新しい仕組みの開発に資源を優先して当てるということが正当化できる。顧客満足度調査の精度の向上、分析ツールの開発、スタッフへのタイムリーな情報提供、「サービス品質重視の企業」という社内ブランディングなど、経験価値を上げるための仕組みが生まれ、それらに迷わず投資してくることができた。星野リゾートというブランドの認知度が高まっていく過程で、「良いサービス」という知覚品質を同時に獲得することができ、それは現在の業績に大いに貢献している。


 差別化の要素としてはアクセスを選択した。他の要素での差別化が難しいと感じる一方で、ネット上での予約や海外からの予約など、旅行商品の買い易さが大きく変化している過程にあり、業界スタンダードがしっかりと確立されていない分野と言えた。


 自社ホームページ上では情報の見やすさや予約の機能がかつてないほど重要になってきていて、タブレット機器が登場すればそれにも対応する必要があった。海外からの観光客に対応するためには、言語対応だけではなく情報の中身も変えていく必要がある。同時に予約チャネルが増加していくことに対応するためのシステム開発も大切だ。これらへの投資の内容と規模を判断する際、ファイブ・ウェイ・ポジショニング理論を採用し、アクセスを第2位の要素として設定するという覚悟を持っていると正当化しやすいし、期待される成果も設定しやすい。


 これがまさにファイブ・ウェイ・ポジショニングの教えである。第1位と第2位の要素には妥協なく注力し、残り3要素は業界水準を下回ってはいけない。自信を持って「業界水準を下回らないようにすれば良いのだ」と言い切れるところがこの理論の長所であり、本書は資源の制約がある中でのコモディティ化に対応するアプローチを提案している。



 近年、グローバリゼーションは進み、コモディティ化は不可避であり、同時にその問題に対処するための資源が限られていることはどの企業にとっても共通の課題となっている。


 今一度、読者の皆さんが抱えている経営課題を見つめてもらいたい。


 コモディティ化にどう対処すればいいのか?


 限られた資源をどう有効に利用すればいいのか?


 どう競争優位のポジションを確立すればいいのか?


 これらの課題に対して、ファイブ・ウェイ・ポジショニングはわかりやすいアプローチを提案しており、試してみる価値の高い理論であると考えている。


星野リゾート 星野佳路

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