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(2021/11/26 追記)

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お江戸の職人(エリート) 素朴な大疑問 今に伝わる「技」から「粋」で「いなせ」な暮らしぶりまで
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雑学
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第4章 武具をつくる

『お江戸の職人(エリート) 素朴な大疑問 今に伝わる「技」から「粋」で「いなせ」な暮らしぶりまで』
[著]中江克己 [発行]PHP研究所


読了目安時間:21分
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刀鍛冶 〓 鎚で打つ



 いまは刀といっても美術工芸品として扱われるが、江戸の武士社会ではさほど使うことがなかったとはいえ、命のやりとりに必要なものだった。だから刀は武士の魂ともいわれ、その刀身をつくり出す刀()()は、職人の中でももっとも重んじられていたようだ。しかも仕事場は神聖な場とされていたから、二間(約三・六メートル)四方くらいの仕事場に()()(なわ)をめぐらせて清めた。むろん、職人も身を清めて仕事にのぞんだ。

「珍しく妻と物言う刀鍛冶」


 ひとつの刀を完成させるまで、自分の妻であっても女性を近づけず、仕事に打ち込んだ。


 炉に火をおこし、(ふいご)で風を送って火力を大きくし、(はがね)を溶かして打ち、刀身に仕上げるのが刀鍛冶の仕事だ。流派によってその作業工程や道具は少しずつ違うが、まず「(した)(ぎたえ)」からはじめる。


 刀の原材料は「(たま)(はがね)」という和鉄である。熱した鋼を(つち)でつぶし、焼きを入れて細かく砕く。砕いたなかからよい玉鋼を選り抜き、台の上に隙間なく何段にも積み重ね、()()(炉)に入れて熱する。純粋な鉄の融点は一五二〇度だが、玉鋼は炭素を含有しているから融点はそれより低い。したがって、あまり温度が上がりすぎると玉鋼が熔けるので、その寸前まで温度を上げて取り出す。これを鉄床に置き、鎚で叩く。三人がかりで、それぞれ鎚を持ち、鍛え伸ばして(のみ)で切れ目を入れ、半分に折り曲げては打つという作業を何十回も繰り返す。こうして不純物を除き、粘りを出すわけだ。金槌で叩き、鍛えるのが刀鍛冶の仕事といっても過言ではない。


 つぎに「(あげ)(きたえ)」をする。つまり、刀の形にしながら鍛え、仕上げていくわけである。じつをいうと、刀は一つの鋼からつくられるわけではない。刀の芯となる「(しん)(がね)」を「(かわ)(がね)」で包む。むろん、熱して、叩きながらこの作業をする。さらに刃となる「()(がね)」をつけ、これを「()(のべ)」といって、(むね)の形や切っ先をつくりながら叩き、延ばしていく。


 その後、また焼き、さらに延ばして刀の形にする。これを「火づくり」という。つぎに「仕上げ」だが、これは砥石で研ぎ、形をととのえる作業だ。


 最後は「焼き入れ」だが、その前に粘土を刀に塗る。こうして焼き入れを行なう。高温で加熱したあと、急冷する作業だが、これによって硬さを増す。また、粘土によって細かい線の微妙な刃紋ができる。


 研師に研がせてみて納得いく仕上がりだったら銘を彫りつける。

「いかめしき音や新身の刀鍛冶」


 この「新身」とは、新たに鍛えた刀のことだ。刀を叩く音までが、なにやらいかめしく聞こえてくるというのだ。


研屋 〓 武士の魂に魂を入れる


「魂が(とぎ)()の見世にならんで居」


 刀鍛冶が意図した通りに刀刃を仕上げるのが研屋の仕事だ。

『守貞漫稿』に「(とぎ)()。挿刀、小刀等を磨す。又(のこぎり)の歯も磨す。(けだし)刀剣は磨することを得ず。別に刀磨工あり。俗に此徒をとぎやと云」とあるように、刀剣を磨ぐ職人は「とぎや」と呼ばれていたようだ。


 刀は武士の魂という。冒頭の川柳は、研屋の店内には、魂がずらりと並んでいる、というのである。


 この職人の作業場は、北向きがいいのだとか。それというのも、室内に光の変化が少なく、研ぎ具合を確認するのに都合がよいからだ。また、仕事中に大量の水を使うので、吸湿性にすぐれた(ひのき)などの建材で作られた部屋が適している、ともいわれた。


 職人は、全身の力が入れやすいよう、床に傾斜をつけて砥石と小判形の(おお)(だらい)をならべ、あぐらをかいて研ぐ。

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