読みたいトコだけ買える本。
犬耳書店
初めての方へ 記事一覧 無料登録 ログイン
0
-2
kiji
0
0
1202993
0
「和魂英才」のすゝめ
2
0
0
0
0
0
0
教育
お気に入りとは?

お気に入りボタンを押すとお気に入りリストにこのページが追加されます。興味のあるページ・気になったページを後から確認するのに便利です。

お気に入り お気に入り
第二章 「自主独立」の学校経営

『「和魂英才」のすゝめ』
[著]都築仁子 [発行]PHP研究所


読了目安時間:29分
この記事が役に立った
0
| |
文字サイズ


数値で人の価値は計れない



 私が都築家に弟子入りしたような格好で始まった、主人と〓助先生、貞枝先生との共同生活は、それこそ毎日が勉強でした。最初の頃は、朝から〓助先生の書斎で鉛筆を削り、先生が語る理念を聴きながら、口述筆記を続けました。


 都築家では、理念的な部分を〓助先生が確立し、その実践を担っていたのが貞枝先生です。〓助先生がよく言われていたのは、幕末に吉田松陰が維新の偉人たちを数多く育てた松下村塾と同様に、「どんな人にも、それぞれ生まれ持った特色がある」ということです。「偏差値、要するに数値で()()の価値は計れない」と、偏差値全盛の時代だったあの頃、〓助先生は盛んに言われました。


 人間一人ひとりが生まれ持っているものは「個性」、すなわち特色であり、それは数値では表すことができない、というのが〓助先生の持論です。

「一人の人間の特色を数で表すことはできないはずなのに、機械でもない人間の価値を、試験の点数や偏差値といった数値に置き換えようとすることには非常に無理がある。だから私たちは私立学校をつくり、自分たちの考える教育を行うために、福岡第一高校を設立した」


 それが都築学園の理念であり、そのヒントは松下村塾からきていたのです。


 〓助先生は非常に博識かつ勉強家で、福岡県の国漢部会の要職をなさっていたので、漢籍にも詳しい方でした。〓助先生は、仏教関係の哲学の中から、都築学園の建学の理念におけるルーツである「第一()(たい)」という言葉に出会われたのです。


 〓助先生と貞枝先生が最初に設立された福岡第一高校や第一薬科大学などの校名も、この「第一義諦」という言葉に由来しています。

「第一義諦」とは、「真実なるもの」や「尊いもの」を意味し、仏教で最も大切にされている言葉です。仏典の中に「第一義諦」という言葉が出てくるときは、そこだけがゴシック体で大きな文字になっているそうです。仏教学の中でも、宗派を問わずにそれだけ大事にされている理念で、〓助先生も「私はこの『第一義諦』を理念に掲げて教育をやるんだ」と言われていました。


 もっとも、そこで立ち止まっていないのが〓助先生の素晴らしいところで、〓助先生は「第一義諦」という仏教哲学の言葉から、「個性の伸展による人生練磨」という都築学園の建学の精神を引き出されています。「人生練磨」という言葉があとに続いているところが重要で、個性の伸展は学校教育だけで終わるものではなく、一生をかけて行っていくものなのです。


 人生練磨とは、自分の好きな道や得意な道で得手に帆を揚げ、悪戦苦闘していくことを意味します。それが、あなたの生きた証であり、「自分はこの道では誰にも負けない。お金も時間も関係なく、すべてを懸けて、徹底してやり遂げた」と、一生を終えるときに誇りを持って言えるところに、人生の価値が生まれてくるのです。


「命がけで好きなことをやりなさい」



 〓助先生は、「個性の伸展による人生練磨」という建学の精神は、「自分はこれが好きで得意だということを、命がけで一生極めていきなさい、というエールなのだ」と語られています。


 じつはその頃、〓助先生はがんの末期で余命幾ばくもない状態でしたから、ご自身の生き方も振り返ったうえで、「自分の命を費やしてやるのが教育だ」と思われていたのでしょう。


 都築学園の建学の精神に「個性の伸展」だけでなく「人生練磨」という言葉まで加えられたのは、「命がけで、一生をかけて自分の好きなことをやりなさい」という思いを込めてのことだったと思います。


 となると、これは個人の情熱の問題ですから、自分の好きなことを命がけでやろうと思えば「休めない」とか「ご飯も食べる暇がない」という愚痴などは言ってはいられないはずです。私は少なくともずっとそう思ってきましたが、こういう考え方は必ずしも多数派ではないということも、最近理解するようになりました。


 それでも私は、一人でも多くの人が、自分が生きる人生の価値や役割、あるいは天職というものに目覚めるようになってほしいと思うのです。


 なぜなら、人間の命が一つしかないように、人間の個性も一つしかないからです。


 個性は唯一無二であり、一人ひとりの生まれ方が異なるように、一人ひとりの人間は、それぞれ異なる役割を与えられて、この世に生まれてきているのです。


 個性といってもわかりにくい部分があるので、私はいつも「天職に目覚めてほしい」と話しています。そもそも「個性が大切です」と言われても、「個性が何かがよくわからない」という人も少なくないからです。


 個性とは「固有のもの」であり、最終的には「自分はどんな存在で、他とは何が違うのか」というアイデンティティ(identity)の問題に行き着くのです。一般的に「個性」の訳語として当てられる「インディヴィデュアリティ(individuality)」や「パーソナリティ(personality)」は、それとはニュアンスが異なります。英語の辞書で「identity」を引くと、「同一性」と「個性」という訳語になっています。


 その意味で、グローバルの時代に日本という国も日本人も、日本企業もアイデンティティをしっかり持つべきでしょう。英語の文章で“I”がどこに来ても大文字であるように、「私」という固有存在はまさしく天上天下唯我独尊であり、もっとも大切なのは個性なのです。

この記事は役に立ちましたか?

役に立った
0
残り:12241文字/本文:14443文字
この記事を買った人はこれも買っています
      この記事を収録している本
      この本で最も売れている記事
      レビューを書くレビューを書く

      レビューを書いてポイントゲット!【詳細はこちら】

      この本の目次