『わが子を有名中学に入れる法』
[著]清水克彦
[解説]和田秀樹
[発行]PHP研究所
教科書を読めば対策が立てやすくなる
息子や娘に中学受験をさせようと思い立ったら、塾だけに頼ることなく、まず親が学校の教科書をじっくり眺めてほしい。
小学六年生の教科書を開いてみると、算数の教科書に、複雑な計算の箇所には電卓マークがついていたり、「発展」と書かれた応用問題も、その数が少ないことが一目瞭然である。
「学力低下を受けて教科書が改訂されたと聞いていたけど、この程度なの?」
「自分たちが小学生の頃はもっと高度なことを習っていたよな」
などと思うだろう。今の公立小の教科内容の脆弱さが、手に取るようにわかるはずだ。
私が取材したなかに、小学五年生から受験を思い立ち、長女を首都圏の超難関校の一つである女子学院中や浦和明の星中など数校に合格させた家庭があるが、受験を決意したのは、
「小学生時代くらいは伸び伸び育てたい。中学も高校も埼玉県内の公立校で十分」
と考えていた父親が、五年生になった娘の教科書を初めて見て、これはまずい、と判断したのがきっかけだ。
また、別の家庭で、関西の名門、奈良の東大寺学園中に長男を入学させた父親も、3・14の円周率を3で計算したり、台形の面積を求める公式を教えないという「ゆとり教育」下での教科書を目の当たりにし、これでは伸びる学力も伸ばせなくなる、と実感したのが中学受験をさせる直接の動機だった。
前述した独自アンケートでも、公立小の教科内容への不安は如実にあらわれているので抜粋してご紹介しよう(開成、桜蔭など有名中学合格者の保護者への独自調査)。
◆公立小の教科内容に不安を感じましたか?
○大いに不安を感じた 三五人
○不安を感じた 五六人
○とくに不安は感じなかった 九人
特筆すべきは、「不安を感じた人」が九割にのぼった点だ。とくに不安を感じなかったと答えた九人も、「最初から学校には期待できないと思っていた」「小学校入学時から中学受験に備えて、公文式の教室や塾で学力をつけていたのでとくに感じなかった」と述べているので、ほぼ全員が、公立小で採用している教科書や、それをベースにした授業内容には不安を感じていることになる。