『図解 いちばんやさしい地政学の本』
[著]沢辺有司
[発行]彩図社
いま世界のあちこちでテロや紛争が起き、EU離脱や地域の独立運動、国家併合、大量難民流入など、シビアな問題が次々と起きています。
なぜこうした問題が起きているのでしょうか?
その地域で起きていることは、ある程度、その地域で積み重ねられてきた「歴史」を紐解くことで見えてくることがあります。たとえば、「ソ連崩壊後に独立したウクライナには、ウクライナ人とロシア系住民の対立があって、EU加盟をめぐって衝突が起きた」などとなります。でも、地図をベースとした「地政学」を使うと、少し違った見方になります。「ウクライナはヨーロッパとロシアのバッファゾーン(緩衝地帯)になっているので、昔からどうしても紛争が起きやすい」となります。
詳しくは本文を見ていただければと思いますが、ウクライナや朝鮮半島など、大国と大国のあいだにはさまれたバッファゾーンはいつの時代でも紛争が起きやすいのです。地政学にはこうしたルールがいくつもあります。実際にいま起きていることの多くは、地政学を使うことでかなりクリアに見えてきます。
まだなじみのうすい方も多いかと思いますが、いま「地政学」が注目されています。「地政学」とは、地図をもとに政治や軍事を考えていく学問です。軍事理論でもあるため、戦後の日本では封印されていました。
地理というのは、時代が変わっても変わりません。ですから、変わらない地理をもとにすることで、それぞれの国や地域がとる戦略というのは自ずと決まってくる、と考えられます。となると、いくら世界情勢が混沌としてきても、その国がとるべき一貫した正しい戦略があるはずだ、となります。地政学ではこう考えるわけです。
本書では、アメリカ、ロシア、中国という現在の世界のメインプレーヤーの地政学を見たあと、EU解体の危機に揺れるヨーロッパ、紛争にさらされる中近東の地政学を見ていきます。そしてさいごに、日本とアジア各国の地政学を見ていきます。
混沌として先の見えない時代です。だからこそ、普遍的な知である地政学的視点をもつことが大切です。それによって自信をもって世界と向き合うことができるはずです。