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齋藤孝の「ガツンと一発」シリーズ 第8巻 キミは日本のことを、ちゃんと知っているか!
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教育
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長いあとがき

『齋藤孝の「ガツンと一発」シリーズ 第8巻 キミは日本のことを、ちゃんと知っているか!』
[著]齋藤孝 [発行]PHP研究所


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 最後(さいご)に、日本人(にほんじん)としてキミたちにどうしても(つた)えたいことがあります。それは、核兵器反対運動(かくへいきはんたいうんどう)日本人(にほんじん)のつとめだ!」ということです。

 日本人(にほんじん)世界(せかい)()けて発信(はっしん)していかなきゃいけないことに、原爆(げんばく)水爆(すいばく)水素爆弾(すいそばくだん))の使用禁止(しようきんし)がある。というのも、日本(にほん)世界(せかい)唯一(ゆいいつ)被爆国(ひばくこく)であり、広島(ひろしま)だけで二十三万人以上(にじゅうさんまんにんいじょう)(ひと)が、長崎(ながさき)()わせれば三十七万人以上(さんじゅうななまんにんいじょう)(ひと)原爆(げんばく)によって(いのち)()としているからだ。

 広島(ひろしま)原爆資料館(げんばくしりょうかん)広島平和記念資料館(ひろしまへいわきねんしりょうかん))に()ったことがあるかい?

 (ぼく)はあるよ。すごくショックだった。

 ()どもたちまでもが、一瞬(いっしゅん)のうちに原爆(げんばく)にやられたんだ。第二次世界大戦(だいにじせかいたいせん)()わる直前(ちょくぜん)の一九四五年八月六日(ねんはちがつむいか)のことだ。ひどすぎる。

 原爆(げんばく)原因(げんいん)で、この(とし)のうちに広島(ひろしま)()くなった(ひと)十数万人(じゅうすうまんにん)といわれるが、一般市民(いっぱんしみん)非戦闘員(ひせんとういん))をそんなに大量(たいりょう)(ころ)必要(ひつよう)が、ほんとうにあったのか? なぜアメリカは、日本(にほん)同盟国(どうめいこく)だったイタリアやドイツには原爆(げんばく)()とさず、日本(にほん)にだけ()としたのか?

 ここには、アジア(じん)(たい)する差別意識(さべついしき)があると、(ぼく)(おも)う。欧米(おうべい)(ひと)のなかには、いまでもアジア(じん)(たい)して人種差別意識(じんしゅさべついしき)()っている(ひと)(おお)い。戦争(せんそう)のときなら、なおさらだ。日本(にほん)原爆(げんばく)実験場(じっけんじょう)にされたんだ。

 (ぼく)たち日本人(にほんじん)は、原子爆弾(げんしばくだん)がどれほど(おそ)ろしいものかを()らなければならないし、それを世界(せかい)(つた)えていかなければならない。アメリカ(じん)のほとんどは、原爆(げんばく)のことをよく()らないし、()としたことを反省(はんせい)もしていない。これが現実(げんじつ)だ。日本人(にほんじん)(つた)えなければ、だれも本気(ほんき)では(かんが)えない。

 それは、(おそ)ろしいことだろう。

 かつてナチス(ヒトラーの(ひき)いた二十世紀前半(にじっせいきぜんはん)のドイツの政権政党(せいけんせいとう))は、ユダヤ(じん)虐殺(ぎゃくさつ)した。その(かず)は、(すく)なくとも五百万(ごひゃくまん)六百万人(ろっぴゃくまんにん)といわれる。

 この事実(じじつ)(わす)れないための(ほん)として、ユダヤ人少女(じんしょうじょ)アンネ・フランクの()いた『アンネの日記(にっき)』がある。この(ほん)世界中(せかいじゅう)(ひと)()まれている。だから、ユダヤ(じん)虐殺(ぎゃくさつ)悲劇(ひげき)(わす)れられることがない。

 原爆(げんばく)についても、悲劇(ひげき)後世(こうせい)(つた)えるこんな(ほん)があればなぁ……と(おも)って、(ぼく)(さが)したんだ。そして、()つけた。『いしぶみ((いしぶみ))――広島二中一年生全滅(ひろしまにちゅういちねんせいぜんめつ)記録(きろく)』(広島(ひろしま)テレビ放送(ほうそう)(へん)、ポプラ社文庫(しゃぶんこ))という(ほん)だ。

 この(ほん)は、(こころ)()さぶる。原爆(げんばく)()ちた直後(ちょくご)様子(ようす)がはっきりと、中学生(ちゅうがくせい)たちの言葉(ことば)で、あるいはその遺族(いぞく)たちの言葉(ことば)(かた)られている。一日(いちにち)二日生(ふつかい)きて()んでいった(ひと)もたくさんいた。その(ひと)たちが、あるいは(おや)たちが、すさまじい地獄(じごく)(かた)ってくれていた。

 まず、原爆(げんばく)()ちた瞬間(しゅんかん)が、(つぎ)のように()かれています。



 原子爆弾(げんしばくだん)は、広島二中(ひろしまにちゅう)一年生(いちねんせい)(なら)んでいた本川土手(ほんかわどて)から北東(ほくとう)五百(ごひゃく)メートル、いまの原爆(げんばく)ドームの上空(じょうくう)五百七十(ごひゃくななじゅう)メートルのところで爆発(ばくはつ)したのです。(中略(ちゅうりゃく)

 一瞬(いっしゅん)直径(ちょっけい)(ひゃく)メートル、表面(ひょうめん)温度(おんど)九千度(きゅうせんど)もある太陽(たいよう)のような()(たま)ができ、そこからオレンジ(いろ)のせん(こう)熱線(ねっせん)、そのあとを(つよ)爆風(ばくふう)()いかけました。わずか五百(ごひゃく)メートルの間近(まぢか)にいた広島二中(ひろしまにちゅう)一年生(いちねんせい)は、せん(こう)()()かれ、(ふく)はもえだし、そして(ちい)さなからだは地面(じめん)にたたきつけられ、(じゅう)メートルも()きとばされたのでした。

 河野幹雄(こうのみきお)くんは、ピカッと(ひか)ったなと(おも)ったときから()()えなくなり、山田哲治(やまだてつじ)くんは、数人(すうにん)同級生(どうきゅうせい)爆風(ばくふう)本川(ほんかわ)(なか)()きとばされるのを()ました。

 故選浩行(こせんひろゆき)くんは、突然(とつぜん)(おお)きな(おと)といっしょにあたりが(しろ)いけむりでいっぱいになり、(ちか)くの建物(たてもの)がこわれて、()やレンガが()んできて、みんなその(なか)(うず)まったといっています。


 この学年(がくねん)()たちは、全員死(ぜんいんし)んでしまった。しかし、(かれ)らの(のこ)した言葉(ことば)()きている。いくつか紹介(しょうかい)します。


 五学級(ごがっきゅう)下野義樹(しものよしき)くんは、土手(どて)にはいあがるまでにあったことを、こう(はな)しています。
(かわ)(なか)では板切(いたぎ)れにつかまって()いていました。土手(どて)にはいあがってみたら、(まち)はめちゃめちゃで、ぼくはもうだめだと(おも)った。しかし、()をとりなおして、(ちち)(はは)にあいたい一心(いっしん)でがんばった。

 (きし)にあがるとき、先生(せんせい)がぼくの()()っぱってくださった。そして、(きみ)はあまりやけどをしていないから、元気(げんき)をだしてがんばれ、と(はげ)ましてくださった。いっしょに(きし)にはいあがって、()(みず)(さが)しているうちに、けがのひどかった先生(せんせい)は、もう、わたしはだめだ、しかし、(きみ)はがんばれよ、といわれてはなればなれになったが、そのとき、先生(せんせい)としっかり()をにぎって(わか)れました。」


 もう一度(いちど)、お(とう)さんやお(かあ)さんの(かお)()たい、その一心(いっしん)川土手(かわどて)にがんばっていた五学級(ごがっきゅう)下野義樹(しものよしき)くんは、夜九時四十分(よるくじよんじっぷん)、お(とう)さんの(こえ)()きました。
「わたしが大声(おおごえ)名前(なまえ)()ぶと、“お(とう)ちゃん”と()をあげてよろこびました。()キロ(ある)いて南観音町(みなみかんのんまち)(いえ)につれて(かえ)ると、学校(がっこう)(やす)みの(とど)けを()してくれ、(はら)がやける、といい、ぼくは戦地(せんち)(たたか)っている兵隊(へいたい)さんと()わりないんだね、と(ねん)をおし、しきりに“くろがねの(うた)”をうたってくれとせがみました。」


 二学級(にがっきゅう)脇坂邦男(わきさかくにお)くんのお(とう)さんが、新大橋(しんおおはし)(ひがし)づめについたのは、午前一時半(ごぜんいちじはん)夜半(やはん)ちかい時刻(じこく)でした。
名前(なまえ)()ぶと、“お(とう)ちゃん”と、わが()とは(おも)えないやけどにくずれた(かお)返事(へんじ)しました。

 お(とう)ちゃんはきっときてくれると(しん)じていた、といいました。

 自転車(じてんしゃ)荷台(にだい)()せて、十六(じゅうろっ)キロの夜道(よみち)安佐郡可部町(あさぐんかべちょう)まで(かえ)りました。そして、翌日(よくじつ)午後二時半(ごごにじはん)()んだのです。」


 小野淳(おのあつし)くんは、(てら)救護所(きゅうごじょ)でやけどに(しろ)いくすりをぬってもらって、(ちか)くの(いえ)夕方六時(ゆうがたろくじ)(かえ)ってきました。
「お(かあ)さん、(かえ)りましたよ、といってくれたのですが、(かお)がやけどではれあがり、手当(てあて)のしようがありませんでした。

 やけどで(いた)かったのでしょうが、(とも)だちの()をよんではがんばれといい、(おも)いきり(みず)()みたい、と(もう)しました。(かず)をかぞえてみたり、(とも)だちの名前(なまえ)をよんだりして()をまぎらわし、がまんして(くる)しいとひと(こと)ももらさず、その(よる)七時半(しちじはん)()んでしまいました。」


 一学級(いちがっきゅう)松井昇(まついのぼる)くんは、(中略(ちゅうりゃく)(いえ)につれて(かえ)ってもらいました。
(いえ)(かえ)った午後(ごご)(ちか)くの小学校時代(しょうがっこうじだい)(とも)だちが見舞(みま)いにきてくれまして、みかんを()べながらいろいろと(はな)しておりました。三時(さんじ)ごろ、みんなが(かえ)っていくときには、オーイ、あすは水浴(みずあ)びにいこうや、と大声(おおごえ)でいっておりましたのに、その()病状(びょうじょう)悪化(あっか)して、二時間後(にじかんご)午後五時(ごごごじ)には、(すす)め、(すす)め、やっつけろ、と()をしきりにふりまわし、最後(さいご)には、お(かあ)さん、おばあさん、とそれこそ(こえ)をかぎりに肉親(にくしん)()()びつづけて()にました。」


 この(ほん)は、原爆(げんばく)(おそ)ろしさを(おし)えてくれるだけじゃない。(むかし)中学生(ちゅうがくせい)がどんなに立派(りっぱ)だったかを(つた)えてくれる。()目前(もくぜん)にしていても、ほかの(ひと)のことを(かんが)えられる(こころ)(つよ)さ、やさしさ()っていた中学生(ちゅうがくせい)がこんなにいたのかと(おも)うと、感動(かんどう)する。このしっかりした()たちがなぜ()ななければならなかったのか。その(ひと)たちの無念(むねん)さを世界(せかい)(つた)えなければと(おも)う。


 五学級(ごがっきゅう)山下明治(やましためいじ)くんは、三日目(みっかめ)九日明(ここのかあ)(がた)、お(かあ)さんに()とられて()くなりました。
明治(めいじ)は、()くなるとき、(おとうと)(いもうと)のひとりひとりに(わか)れの言葉(ことば)をいい、わたしが鹿児島(かごしま)のおじいさんに、(なん)といいましょうか、と(もう)しましたら、りっぱに、と(もう)しました。

 死期(しき)がせまり、わたしも(おも)わず、お(かあ)ちゃんもいっしょに()くからね、と(もう)しましたら、あとからでいいよ、と(もう)しました。

 そのときは無我夢中(むがむちゅう)でしたが、あとから(かんが)えますと、なんとまあ、意味(いみ)(ふか)言葉(ことば)でしょうか。

 お(かあ)ちゃんにあえたからいいよ、とも(もう)しました。」


 そして、この(ほん)最後(さいご)は、こう()めくくられています。


 桜美一郎(さくらみいちろう)くんが、広島二中一年生(ひろしまにちゅういちねんせい)最後(さいご)死亡者(しぼうしゃ)でした。

 本川土手(ほんかわどて)整列(せいれつ)した広島二中一年生(ひろしまにちゅういちねんせい)三百二十二人(さんびゃくにじゅうににん)四人(よにん)先生(せんせい)は、こうしてひとり(のこ)らず全滅(ぜんめつ)しました。

 広島(ひろしま)()かれることがありましたら、平和公園(へいわこうえん)本川土手(ほんかわどて)に、広島二中(ひろしまにちゅう)()があるのをたずねてください。

 その()(うら)には、いつも()わらぬ本川(ほんかわ)(なが)れを()つめて、全滅(ぜんめつ)した広島二中(ひろしまにちゅう)()どもたちの名前(なまえ)がきざまれています。

  (はげ)()真上(まうえ)にありて八月(はちがつ)

    (はら)(そこ)より()(さけ)びたき
山下明治(やましためいじ)くんのお(かあ)さんの(うた)



 どう(かん)じた? つらすぎるよね。(ぼく)()いた。ぜひ、一冊(いっさつ)まるごと()んでほしい。

 日本人(にほんじん)(わす)れやすい性質(たち)だけど、原爆(げんばく)(わす)れちゃならない。キミたちが将来(しょうらい)、自分の()どもに、この『いしぶみ』を()ませてくれれば、悲劇(ひげき)記憶(きおく)何十年(なんじゅうねん)もつながることになる。

 (たの)んだよ。


 二〇〇四年十二月一日
齋藤(さいとう) (たかし)
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