『消えるコトバ・消えないコトバ』
[著]外山滋比古
[発行]PHP研究所
富士山が、世界遺産になるとき、ひと悶着あった。
日本が、三保の松原までを含めて富士山としたのに対して、世界遺産認定の本部が異議をさしはさみ、富士山とその周辺のみを名勝として指定すると主張したのである。
おどろいた日本側が、富士山は三保の松原あたりまでを含めたところで価値がある。山の周辺に限定したのでは、富士山の価値は認められないと反論した。
その反論が容認されて、三保の松原も含む一帯が富士山として世界遺産に認定された。
役人にモノがわからないのはいたしかたないことだが、文化にかかわる以上、しっかりした見識の欠けているのは困ったことである。