『消えるコトバ・消えないコトバ』
[著]外山滋比古
[発行]PHP研究所
こどものころ、ずっと、おだやかな農村に育った。まわりはみなやさしく、他人というものがあるということもはっきりしなかった。
小学五年になるとき、近くの大きな町へ転居したので、転校をした。クラスのものが、前いた学校とは違って、つめたい、意地悪そうである。
元気のいいのがやってきて、
「お前、生意気だぞ」
とスゴンだ。気の小さい転校生は、すっかりおびえる。生意気なんていわれたことはかつてなかった。どこがいけないのか。幼い頭でも考えることはできる。新しい学校がきらいになった。
しかし、しばらくすると、新しい友だちができる。