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御社も危ないですよ! 企業不祥事はアリの穴から
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第4章 アウトソーシングのリスクI 美浜原発事故

『御社も危ないですよ! 企業不祥事はアリの穴から』
[著]樋口晴彦 [発行]PHP研究所


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原子力産業での最大の事故



 近年、日本ではアウトソーシングが急速に進展していますが、その一方で、相当な数の企業不祥事が外注業者との接点で発生するようになりました。本章では、このアウトソーシングに伴うリスクを解説するために、美浜原発事故を取り上げることにします。


 二〇〇四年八月、関西電力の美浜原子力発電所三号機の二次系配管が破損し、高温の冷却水が流出しました。冷却水といっても温度は一四〇度もあります。高圧のかかった配管の中では液体ですが、外部に噴き出したとたんに蒸気に変わります。それが約九〇〇トンも流出したのですから、建屋の中には高温の蒸気が充満しました。協力会社の作業員一一人が被災し、そのうち五人が死亡するという日本の原子力産業史上で最大の事故となりました。


 事故の態様は、減肉(配管肉厚の減少)が進行して配管が薄くなっていたため、内圧によって破裂したというものです。原子炉の技術基準では、この部分の配管には最低でも四・七ミリの厚さが必要とされていましたが、事故後に計測したところでは、最も薄い部分は〇・四ミリにまで減肉していました。


 この減肉は、エロージョン/コロージョンによるものです。問題の配管は炭素鋼で作られているので、使用しているうちにどんどん錆ができます。その錆が冷却水に少しずつ溶け出し、その分だけ配管の肉厚が薄くなる現象がエロージョンです。コロージョンというのは、冷却水の流れや渦によって配管が少しずつ削り取られていく現象です。エロージョンとコロージョンは同時に進行し、区別がつかないものですから、一緒にしてエロージョン/コロージョンと呼ばれています。


 プラントを運転すれば、配管にエロージョン/コロージョンが発生して減肉していくのは当然です。しかも、破損箇所の減肉のスピードが異常に速かったわけではありません。事故後に計算したところでは、その箇所の減肉の進み具合は、過去のデータなどから十分に予想できる範囲におさまっていました。つまり、「想定の範囲内」ということです。それでは、どうして事故が発生したのでしょうか。その答えはきわめてシンプルです。問題の箇所が点検リストから漏れ、十数年にわたって誰もその肉厚を点検していなかったのです。少し話が長くなりますが、その経緯について説明します。


見過ごされた登録漏れ



 一九八六年、アメリカのサリー原発で配管が破損し、八人が死傷する事故が発生しました。この事故も、エロージョン/コロージョンによる減肉が進んで配管が破断したというものです。そこで関西電力は、配管の肉厚点検に関する調査を三菱重工に依頼しました。三菱重工は美浜原発を建設したプラントメーカーですが、建設後の維持管理にも従事していました。その三菱重工の調査報告を踏まえて、関西電力では配管肉厚に関する管理指針を一九九〇年に制定しました。これが経緯の第一です。


 続いて経緯の第二です。関西電力が作った管理指針は、いわばガイドラインのようなものでした。この管理指針に基づいて具体的に点検箇所を見直し、点検リストを作成しなければいけません。その作業を受託したのは、やはり三菱重工でした。同社では、それまでに建設したすべての原子炉について一斉に点検リストを見直し、一年半の時間をかけて六万三〇〇〇カ所をリストアップしたのですが、このときに問題の登録漏れが発生しました。関西電力の一一の原子炉で計四二カ所が登録漏れとなり、そのうちで美浜三号機の登録漏れは三カ所でした。この点検リストを納入された関西電力では、その内容をまったく確認しなかったので、登録漏れに気がつきませんでした。


 経緯の第三は、点検リストの修正です。点検作業それ自体も受注していた三菱重工では、一九九一年から九六年にかけて一〇カ所の登録漏れを散発的に発見し、そのたびにリストに追加しました。この件について関西電力側には特段の説明をしていませんが、別に隠蔽する意図があったわけではありません。

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