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歴史のねむる里へ
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旅行
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飛鳥 香久山は畝傍を愛しと……

『歴史のねむる里へ』
[著]永井路子 [発行]PHP研究所


読了目安時間:11分
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飛鳥路の旅は



 古都めぐり、といっても、飛鳥(あすか)()の旅は京都や奈良をめぐるのとは少しちがうようだ。


 京都や奈良では、私たちは、あの寺、この庭と、現代風俗の中に生き残った古いものを求めてあわただしく走りまわる。いわば、点から点への旅といったらよいだろうか。


 が、飛鳥の旅はそうではない、()()()(いま地名はこう書く)に足をふみいれたとたん、古都の旅が始まるのだ。冬ざれの数日、飛鳥を歩きまわった私は、はじめ、なにげない小さな丘だと見すごしていたものが、じつは古代貴族の墓であることや、道ばたの風化した石仏が、千数百年の謎を秘めていることを知った。昔の建物こそは残っていないが、目にふれるものすべてが歴史につながるといっていい。


 だから──。


 飛鳥にきたら、どれとどれを見なければなどと堅苦しくきめるのはよそう。もっとらくな気持で、ちょうど母のふところへ帰ったように、足にまかせて歩くべきだ。そうしていると、しぜんに古代人の()()きを肌に感じてくる──それが飛鳥の旅なのだと私は思う。


 飛鳥を訪れた日、まず村を通りぬけて、多武(とうの)(みね)に通じるハイキングコースを登ってみた。明るい雑木林から、かげりの濃い杉林へ、幾重にも重なった山ひだは、さまざまな表情を見せてくれる。


……たたなづく(畳み重なった)(あお)(がき)(やま)ごもれる大和しうるはし



 という古代の歌のとおり、飛鳥は緑の山の中にこもる里である。村の終るあたり、有名な()()(やま)(みみ)(なし)畝傍(うねび)の大和三山が手にとるような近さに見える。中でも香久山と耳成は、山というにはあまりにかわいらしくまろやかだ。まるで大和の野に身をうずめて、わずかに肩から上をのぞかせている感じである。畝傍だけが鋭角の線を裾長にひいてすましている。『万葉集』にある(なかの)(おお)(えの)(おう)()(のちの天智天皇)の有名な歌、

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