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黒澤明「生きる」言葉
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ルポ・エッセイ
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人生の目的をさがす時

『黒澤明「生きる」言葉』
[著]黒澤和子 [発行]PHP研究所


読了目安時間:13分
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35

世界中のお母さんたちが、

幸せな世の中になればいい



 明治生まれの男だから、自分の母親のことを語ったり、感傷的なことはあまり口にしなかった。時折、漁港の縁の下の力持ちであるおかみさんたちのノンフィクション、戦後の買出し風景のニュース映像、戦火の中で悲しみにくれる母子の報道等を見ている時、父はいつも独り言のように言う。

「世界中のお母さんたちが、幸せな世の中になればいいな」


 ニコニコ笑って働くおかみさんたちに、色々苦労なこともあったんだろう、親爺が飲兵衛で仕方ないとか、盆踊り姿のお母さんたちを見ては、明るく笑って踊り踊ってるとき良かった良かったって思わないかい、などとぶつぶつ言っている。


 お母さんたちが苦労したり、悲しい思いをしている映像を見ている父の眼は、もの凄く悲しそうで今にも泣きそうで、やがて怒りの眼差しに変わる。


 多くは語らないが、遠くを見る眼になって黙り込む父。

「お母さんたちや、子どもがああいうことになるんだ。戦争だけは、絶対しちゃいけない」


 自分の利益や、自分の代のことばかり考えてる奴ばかりだ、子どもや孫やその先のことを考えて欲しいねと、ため息をつく父。


36

何でも、センセーショナルに

描けばいいというものじゃない


「自省の念も込めて言うんだけど、映画も刺激ばかりで人を引き付ける手法ばかり多用する。テレビの報道も映像だけで(あお)り立てるような、刺激重視のやり方になってきている。ドラマも、これでもかと次々ショッキングな出来事が起きて、あんなに毎度えらいことばかり起こるんじゃ、疲れちゃうよね。まあ、雑誌も新聞もすごい見出しだよ。刺激っていうのは、慣れっこになってどんどん強い刺激を求めるようになるんだ。それは、怖いことなんだよ」


 刺激というのには、精神が深く傷付く打撃的なもの、煽り立てるもの、良い意味悪い意味で触発されるもの、真面目に考える動機となるものなど、沢山の種類があるので使い方は難しいと語っていた。

「薬の中にも毒を以て毒を制するものがあるけど、熟練した調合が必要なんだよ。やり過ぎると、死に至らしめる」


 普通に生きられる環境を、まず創る努力をしてやり直すことが実は早道で、こんがらかった複雑な世の中は人間を(むしば)んで、取り返しのつかないことが起こると懸念していた。

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