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(2021/11/26 追記)

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黒澤明「生きる」言葉
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ルポ・エッセイ
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幸せを願う時

『黒澤明「生きる」言葉』
[著]黒澤和子 [発行]PHP研究所


読了目安時間:15分
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85

柿の実は烏たちのもんだ



 我が家にあった大きな柿の木、丸々とオレンジ色に輝く実は甘く美味しい。


 父はその柿の実を食べてはいけないと禁止するので、父のいない間に祖母がそっと取ってくれた。

「人間は他にも食べるものがたくさんある、あの柿は鳥の食べ物だ」そう育って、ガンとして譲らない父。


 子どもの頃は、美味しい柿なのに何で食べちゃいけないのと、意味が分からなかった。


 大人になって、フッと思い出したから父に事の真意を問いただしてみた。

「縁側で柿の木に群れて、美味しそうに柿の実を食べている鳥たちを見てたら、()(びん)になっちゃってさ。人間は好き勝手にあれが食いたいこれが食いたいなんて言って、食いたいものを食うのにさ」


 人間は人間の仕組みで生きているから、自然の恵みは出来るだけ自然の中で生きる動物たちに譲るべきだということらしい。


 父らしい言い草に、ついつい笑ってしまった。


86

生きているのは、

辛いとか何だとか言うけれど、

楽しいもんだ



 父の『夢』という映画の中の八話「水車のある村」の台詞で、村の老人が、

「あんた、生きるのは苦しいとかなんとか言うけれど、それは人間のきどりでね、正直、生きてるのはいいもんだよ、とても面白い!」

と言うところがある。


 自分で書いた脚本でありながら、父がこの台詞を気に入っていたのは、父にとって宝物のように思っているスタッフたちが「あそこが、一番好きだ」と、言ったからである。


 縁の下の力持ちのような仕事をしているスタッフが、本当に一生懸命働いてみると生きているのは楽しいし面白いと父に語ったのだ。


 そういう立場で仕事を、それも自分の映画のために縁の下で懸命に働いてくれている人が、そう言ってくれたことに父は喜び感激して、深く感謝もしていた。


 賞を戴いた時、父は必ず言う。

「この賞は、僕が代表して貰っただけです」


87

何の後ろめたさもないほど

働いた時は幸せだ


「今日は何の後ろめたさもないほど働いた。美味しいもの食べて、枕を高くして眠れるなあ。こんな風に毎日働けたら幸せだ」


 映画の現場から帰ると、よくこんなセリフを言っていた。


 何でも始めるまでは億劫だが、始めてしまって懸命に仕事をこなしてしまうと、スッキリとした良い気分になるのは誰でも経験することだと思う。


 真面目な人であるし、素直な人間だから、やれるだけのことをして心身共に心地良く疲れて、ヤレヤレ今日はよく働いたと思えると後ろめたさなく羽を伸ばせる。


 世界のクロサワとかクロサワ天皇とか天才と呼ばれてはいたけれど、毎日毎日コツコツと努力して、普通に人間らしく仕事場に通って、色々苦労なこともあるのに「ただいま」と帰宅して、

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