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日本の伝統精神 この国はいかに進むべきか
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生き方・教養
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支那革命と大同小康思想──礼記・礼運篇より──

『日本の伝統精神 この国はいかに進むべきか』
[著]安岡正篤 [発行]PHP研究所


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孟子曰く、文王を待ちて(しか)る後に興る者は凡民(ぼんみん)なり。

()の豪傑の士の(ごと)きは、

文王無しと雖も猶興る。

『孟子』尽心章句上 



革命への反省



 近頃注意しておりますと、著しく気がつく重大な問題と言うか、傾向があります。一つは文明・文化の矛盾ということである。今までは文明・文化の謳歌が盛んであったのでありますが、どうもおかしい、このままゆくと文明民族・文化民族は大きな矛盾と破滅に陥る危険がある、ということが様々の立場から論ぜられるようになってきた。


 その次は革命というものに対する再検討であります。フランス革命以来、なんとなく革命というものを美化する傾向が強かったのでありますが、ソ連や中共の革命は言うまでもなく、アジア、アフリカ、南米等の新興国、インドネシア、キューバといった国々に於ける革命の実情が、さすがにみんなに首をひねらせるようになってきた。疑惑やら、失望やら、反感やらで、革命というものの幻想から次第に醒めてきた。


 もう一つ、これはまだ一般には左程強く出てはおりませんが、イデオロギーの終焉という考え方であります。従来はなにかと言うと、あいつはイデオロギーがない、などという風にイデオロギーばやりであった。今日は共産主義イデオロギーが圧倒的ですが、共産主義に反対のものも、何かそれに代わる良いイデオロギーはないものかといった調子で、イデオロギーはいずれの派に属する人々にも一つの魅力であった。


 ところが、ソ連や中共の現状をみると、ソ連は革命以来五十年、中共は政権を握って十八年にもなるというのに、その実体はどうか。言うことと実際とはまるで違うではないか。人間の世界は変化に富んだ複雑なもので、決まりきったイデオロギーなどで簡単に律せられるものではない。単なるイデオロギーの時代は去った、とこういう議論が(ひそ)かになされるようになってきておる。


 やはり時代の潮流(current)というもので、こういうことを知るのも時務の一つでありますが、これは近頃の中共の有様が大きな契機となっていると思う。


 久しい間、中共の革命は大変な魅力で、これを礼讚し、迎合する者が随分多かった。その中共に文化大革命というものが起こって、紅衛兵(こうえいへい)の登場とか、何とかといろいろ変転極まりないところから、困惑してそれについてゆけないものが出てきた。それに対して中共からとんでもない反撥がはね返ってくる。


 と同時に共産革命の大本山であるソ連と中共とが大喧嘩を始めて、自分の方が正統だとお互いに否定し合う。それが一々日本にも反映して、社会党も共産党も仲間喧嘩を始める。


 もともと仲間喧嘩はマルクス・レーニン主義者にはつきものでありまして、実に血で血を洗う凄惨(せいさん)極まりない軋轢(あつれき)・闘争をやる。スターリンの血の粛清は申す迄もありますまい。中共の毛沢東にしても、一枚岩だとか、兄弟・同志とか、言っておった人々を徹底的にやっつけておる。古来、中国では“士は以て殺すべし、以て(はずか)しむべからず”、と言われるくらい(じよく)(はずかしめ)というものを悪いとしておるが、その殺戮(さつりく)よりも尚悪い侮辱を、血の粛清以上に深刻にやっておるのであります。


 そういうところから、これが革命か、革命とはこんなことをすることか、こんなことをして一体人間の理想社会ができるのかどうか、人間の理想社会は、自分の気にくわぬ者や、意見の合わぬ者をみな追っ払ったり、叩き殺したりしてつくるものなのか。それがイデオロギーというのなら、イデオロギーなどというものはgreat(グレート) illusion(イリユージヨン)(偉大なる錯覚)ではないか。まあ、そういうことが深刻に自覚にのぼってきたわけであります。

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