『「天文学」がよくわかる本 宇宙旅行をしながらラクラク理解!』
[著]新牧賢三郎
[編]向山洋一
[発行]PHP研究所
フロンティア
月
未知の新しい大陸を切り開いたのは、数多くのフロンティア精神でした。私たちもアイザック・アシモフ博士(アメリカ)、カール・セーガン博士(アメリカ)ら科学者が切り開いてきた宇宙の謎をみていきましょう。
ある日、偶然知り合ったエイリアンに、賢さん和子さん一家が宇宙を案内してもらうことになりました。お父さんとお母さんの力を借りながら、賢さんと和子さんは、宇宙旅行でいろいろな謎を解き明かしていくことになります。
月。月は地球の周りを回っている衛星です。衛星というのは、惑星の周りを回っている惑星をいいます。惑星とは、自分から光を出さない星です。一方、自分から光を出す星を恒星と呼んでいます。
月は平均距離で、約38万4400kmしか地球から離れていません。しかも、楕円形を描きながら月は地球の周りを回っていますから、地球に一番近いときは約36万kmほどです。
地球の上では、約36万kmといえば、かなり遠い感じがしますが、宇宙ではすぐそこという感じです。例えば、太陽の直径が約140万kmです。ですから、地球と月との距離は、太陽の大きさの約4分の1しかないのです。
こんなに近くに月があるため、私たちの生活に、月はいろいろな影響を及ぼしています。潮の満干から生物の生体リズムに至るまで影響を受けています。
1 月にある「陸」と「海」
エイリアンの宇宙船に乗って、宇宙旅行に行くことになりました。賢さんと和子さんは大喜びです。
地球から一番近い星、月を探検します。
じょじょに、宇宙船は月に近づいていきました。
エイリアン:「見てごらん。明るく見えるところが“陸”で、暗く見える所が“海”です」
賢さん:「えっ、月には水がないはずだよ」
和子さん:「それでは、なぜ海というのかしら?」
【問題1】
月に“海”は本当にありますか。
(1) わずかだが、本当に北極と南極の一部に海はある。
(2) 地上にはなく、地下水として広がっている海がある。
(3) 平らに見えるところを“海”と呼んだが実は海はない。
【解答】
月には水がありません。 (3) 平らに見えるところを“海”と呼んだが実は海はない。 が正解です。
地球の水は、重力によって地球に引っ張られ、宇宙に逃げることはありません。しかし、月の表面の重力は、地球の重力の約6分の1しかありません。そのため、水蒸気ばかりでなく、酸素や水素といった気体も月から宇宙へ逃げてしまいました。こうして、月は大気も水もない星になったのです。
宇宙から見た地球の“海”と“陸”に似ているので、暗くて平らに見えるところを“海”、明るくて凸凹しているところを“陸”と呼びました。月の地形の呼び名として、他にも“湖”“沼”“入江”“峡谷”“断崖”などがあります。地球の地形に似せて、そう呼んでいるのです。
1969年に人類最初の月着陸を果たしたアポロ11号は、「静かな海」と呼ばれる“海”に着陸したのです。
月の“海”と“陸”とで、見える明るさが違うのはなぜでしょうか。それは岩石のでき方の違いが原因です。
“陸”は約45億年前、月の誕生と同じ頃にできました。白っぽい斜長石を多く含んでいるので、明るく反射するのです。
“海”は“陸”に比べて、年代が若い地形です。約39億年~32億年前に、隕石の衝突によって、内部のマグマが月の表面に噴き出しました。そのマグマが冷えて固まり、なだらかで平らな地形になりました。“海”にある主な岩石は、鉄やマグネシウムを含む黒い玄武岩です。
いよいよ、月に到着です。エイリアンは、どこに着陸するのか、その場所を選んでいます。みんなも月の地図を開いて相談することにしました。すると、おもしろいことをお父さんが見つけたのです。
お父さん:「ここを見て。ガガーリンという地名があるよ」
お母さん:「ガガーリンという人は、旧ソ連の人で、人類で最初に宇宙ロケットに乗った人でしょ」
エイリアン:「宇宙開発に貢献した人たちの名前を、クレーターなどの地形につけているようです」
和子さん:「ねぇ、それでは私たち日本人の名前の地形は月にはないの?」
【問題2】
月の地名に日本人の名前がありますか。
(1) ノーベル賞を取った「湯川(秀樹)」「朝永(振一郎)」の名前がある。