『「天文学」がよくわかる本 宇宙旅行をしながらラクラク理解!』
[著]新牧賢三郎
[編]向山洋一
[発行]PHP研究所
フロンティア
銀河系
いよいよ太陽系を脱出し、銀河系を冒険します。いや、銀河系だけでなく、銀河系外まで探査の手を伸ばします。
1990年、NASAがハッブル望遠鏡を宇宙空間に設置しました。地球の大気に邪魔されないため、その鮮明な画像に期待が寄せられました。しかし、残念なことに光学的な欠陥があったため、像がぼやけていたのです。1993年12月に、修理チームをのせたスペースシャトルが飛び、この欠陥を直すことに成功しました。ハッブル望遠鏡の威力はすばらしいものでした。今までわからなかった、見えなかった宇宙の世界を、次々と私たちに提供してくれました。
また、数多くの観測衛星も打ち上げられました。このような努力により、まるで毎日が新しい事実の発見となりました。
宇宙は120億光年くらいの大きさであることがわかってきました。宇宙は広がっていますので、120億光年先の宇宙を見ることができたら、それは宇宙の生まれたときの姿なのです( 絵で見る宇宙のしくみ⑦参照)。
より遠い星は、宇宙の初期の姿を表しています。だからこそ、ハッブル望遠鏡でより遠くを見て、宇宙の始まりの姿をとらえようというのです。宇宙の始まりは、つまりは宇宙の果てなのです。
さあ、次の冒険の始まりです。
1 銀河系の姿
和子さんと賢さんたちは、太陽系の冒険から、もっと遠くの星までも冒険することになりました。
太陽系は銀河系の一部です。銀河系は、太陽のような恒星が、およそ2千億個も集まってできています。太陽系ですら、1つの恒星である太陽に対して、9つの惑星があるのですから、恒星だけでなく惑星の数も入れると、銀河系の星の数は、それこそいくつになるのかわかりません。
和子さん:「銀河系はどのような形をしているの」
エイリアン:「渦巻き状の形をしています」
賢さん:「わあ、見てみたいな」
お父さん:「賢はいつも夜空で見ているじゃないか」
【問題65】
お父さんは夜空のどこを見て、「銀河系が見える」と言っているのでしょうか。
(1) 水星から冥王星までが並ぶ惑星直列を見て。
(2) 星の集まりである天の川を見て。
(3) 星のように見えるアンドロメダ銀河系を見て。
【解答】
アンドロメダ銀河系は、ずっと遠くの銀河系で、太陽系が所属している銀河系とは別のものです。 (2) 星の集まりである天の川を見て。 が正解です。
私たちが所属している銀河系は、次の図のように、渦巻き状になっています。その直径は10万光年と考えられています。
銀河系の中心が「バルジ」と呼ばれる中心部です。バルジの直径は1万5千光年くらいです。高さは1万5千光年くらいです。バルジの中心に、巨大なブラックホールがあるのではないかといわれています。ブラックホールとは、重力が非常に大きくなって、光をも引きつけ、外に出さない場所をいいます。
太陽系は、バルジから出ている何本もの筋状の腕(「渦状腕」といいます)の中の1本の中にあります。銀河系の中心からおよそ2万8千光年のところに太陽系はあります。
地球は太陽系の中にあります。地球から宇宙を見たとします。銀河系の渦を中から横に見たところは星の数が密集しています。
この星が密集して見えるところが「天の川」と呼ばれているものなのです。
ですから、天の川は私たち銀河系の一部を見ているのです。
「星の数ほど」といいますが、はたして星の数はどれほどあるのでしょうか。私たちの銀河系だけでも、恒星の数は2千億個はあると考えられています。
和子さんが言います。「望遠鏡で見ればたくさん見える」
賢さんが言います。「倍率の良い望遠鏡なら、もっと見える」
そのとおりです。そこで、うんと暗い星も全部数に入れます。宇宙で活躍しているハッブル望遠鏡を使ってでもよいのです。
お父さん:「宇宙にはいったいいくつの星があるのかな」
エイリアン:「宇宙には、塵にさえぎられて、地球まで光が届かない“見えない星”もあります」
お母さん:「お父さんがくれたラブレターの数くらいかしら」
お父さん:「またか。子供の前では勘弁してくれ」
【問題66】
宇宙には見えている星の何倍くらい星がありますか。ただし、うんと暗い星も「見えた」とします。
(1) 1.5倍
(2) 2倍
(3) 2.5倍
【解答】
アメリカの研究者が23年がかりで調べました。 (2) 2倍 が正解です。
アメリカ宇宙望遠鏡研究所のマイケル・ハウザー博士らが、1998年1月9日のアメリカ天文学会で「宇宙の星は見える星の2倍くらい」という発表を行いました。
ハウザー博士は、1975年頃から、星たちの出すエネルギーから計算できると計画し、1989年に、アメリカ航空宇宙局(NASA)の探査衛星「コービー」を打ち上げました。
このコービーを使って、星たちが出すエネルギーを割り出しました。データの分析に7年もかかりました。
その結果、「宇宙全体では、肉眼や望遠鏡で見える光の、少なくとも2倍のエネルギーを星たちは出している」ということがわかりました。
この観測結果から、「宇宙の星は見える星の2倍くらい」という発表を行ったのです。
ハウザー博士は、天文学会で、次のような談話を発表しました。
「そんなに星がたくさん隠れていたとは。宇宙には塵がたくさんあって、星を見えなくしているのかもしれない。時間がかかったが、やったかいがあった」
2 銀河系も動いている
宇宙は生きています。時々刻々と変化しています。非常に精密にいうのなら、わずかながら、昨日見た星空と今日見た星空とでは違うのです。
地球は、自転をしています。自転しながら、太陽の周りを公転しています。公転の中心である太陽も動いています。毎秒20kmの速さで、ヘラクレス座の左手首にあるグサイ星に向かって、太陽は動いています。実は、太陽系がある銀河系も、銀河の中心を軸にして回転しています。
エイリアン:「モニターを見てください。これが銀河系の回転の動きです」