『やさしい人(愛蔵版)』
[著]加藤諦三
[発行]PHP研究所
心の傷を乗り越えた人はやさしくなる
やさしくなれない人たちがいる。
それがここまで説明してきた、自己蔑視している人、甘えている人、ナルシシストなど傷つきやすい人たち。
その人たちの共通した問題点がある。
それは、嫌いな人たちから離れられないということである。
別の言葉で言えば、「嫌いな人に執着する」。
それに対して、やさしい人は、相手を嫌いなら、その人たちから離れる努力をする。
いつまでも嫌いな人たちに執着していない。
それは、やさしい人たちが心理的に自立しているからであろう。
自我が確立しているといってもいいだろう。
やさしい人は、心の傷を乗り越えた人たちなのである。
やさしい人も、傷ついたときには同じように辛い。
いや、やさしい人に成長した人のほうが、いろいろなことは辛かったかもしれない。
いずれにしろ、やさしい人になれた人は、心の傷を乗り越えた。
そして、やさしい人になった。
よく人は「ストレスで眠れない」と言う。
しかし、ストレスというよりも、ほんとうに眠れなくて体調を崩しているときは、心に傷があるときであろう。たとえば、裏切られたときである。
「ここまでしてあげたのに、こういう仕打ちをするのか」というような悔しさを味わったときである。
「恩を仇で返す」という言葉がある。そのような体験をしたときに悔しい。