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[新装版]マキャヴェリの経営語録 人を動かす「かけひき」の科学
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ビジネス
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第三章 地位を保つの巻

『[新装版]マキャヴェリの経営語録 人を動かす「かけひき」の科学』
[著]唐津一 [発行]PHP研究所


読了目安時間:29分
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25 幸運によって君主となった平民が、その地位を保持することはむずかしい。〈第七章〉





 合理性を追求する企業内においても、気まぐれは、ときとして意外な結果を生む。そして、その地位は平和が続く場合にかぎり、多少は保ちうることがある。地位にくらべて能力が劣るときでも、いちおう前任者の方法をそのまま踏襲するだけで、とにかくその政権は続くだろう。


 これは、ちょうど、パイロットが手放しで飛行機に乗るようなものである。飛行機は、多少のゆれなら、放っておいても自分で安定を回復できる設計になっている。だから見かけは、パイロットが(そう)(じゅう)(かん)を握っているようである。しかしながら、突風かなにかで姿勢を大きくくずされると、たちまち安定を失って墜落の危険にさらされるだろう。


 第二次大戦後わが国では、いわゆる追放令のために、予想もしなかった人が経営者になりあがった例が多い。三等重役といった言葉で、その仕事ぶりを皮肉られたのもその時代である。しかしながら、戦後の経済発展とその変化は、世界でも珍しいくらいにはげしいものであった。そのため、地位に能力のおよばない人びとは、まもなくつぎつぎと()(ぜん)(とう)()されていった。


 しかし、なにかの偶然によってこの種の地位につきえたときは、自己の能力不足を気にする必要はない。自己啓発のための努力を払えばよいのである。それを行なわないで、その地位に酔い、虚栄心だけを満足させるようなくだらないことをしていると、近い将来にかならずその地位から追い出されるであろう。


 ところが、ここに皮肉なことがある。新しい自己啓発のための努力を払うような人物は、じつは十分その任にたえるだけの能力を持ち合わせている者である。すこしは勉強したらよさそうにと思われる人物にかぎって、そのような努力をしない。それどころか、部下が見るに見かねて、そのことを忠告すると、「おれのことを教育する気か」と虚勢をはるのである。


 そのようなこともあって、無能な経営者は意外に早く没落してくれるから、自然の摂理はじつにうまくできている。


 先に、ある工作機械メーカーへ行ったとき、傾いた経営を立て直すためというので、外部から社長に就任した人物がいた。その人のまえの職業は金融関係で、床柱を背にしてすわる側である。ところが、その人と話をしてみて驚いたことには、何を話しても、「あ、それは知っている」と言って話の横取りをして得々としているのである。そんなことはいっこうかまわないのだが、それは単なる耳学問であって、専門家のこちらからみると、何も知ってはいない。私もずいぶんいろいろな経営者と会ったことがあるが、こんなのははじめてだった。


 とにかく、なんでも自分は知っていると思っているのだから、手がつけられない。あの調子では長くないな、と思っていたら、半年もたたないうちに、選手交代で首になってしまった。


 その数日後、やはり銀行から、名古屋のある紡績メーカーへ派遣されて、経営者に就任した人に会った。ところが、この人はまったく逆で、こちらが何を話しても感にたえないような顔をして、それからどうしました、とつぎの話のさいそくをする。それがまた素人(しろうと)っぽい質問も平気でする。そのため、いささか(たよ)りないという気もしたが、それだけ熱心だと、こちらもつい引きずりこまれて話しこんでしまった。


 この会社は、三年後に行ってみたが、りっぱに立ち直り、その人は貫禄もついて、見ちがえるようになった。


 まちがって幸運をつかんでも、自己啓発を心がければよい。しかし、それにはひじょうな努力のみがこれを支えうる。

26 新興国家は、暴風に対抗できるような根と枝とを張ることはできない。〈第七章〉





 歴史の変動期は、かならず風雲児を生む。このことは、先の戦争においても例外ではなかった。


 とくに、財閥の解体、実力者の追放、デフレ政策、朝鮮事変といった、岩をかむ激流のような息もつかせぬ変化の時代には、多くの成功者と、またそれに数十倍する失敗者とが生まれ、また消えていった。


 しかし、その嵐の中においてもなお生き残り、安定した企業の姿を保ちえた経営者は、きわめて少なかった。そして、その時代以上に激動の予想される今後の五カ年間を生き残ることのできる者は、誰と誰かはまさにドラマである。


 今振り返ってみると、旧財閥系を筆頭とする古くからの名門企業は、わずかの例外をのぞいて、みごとに立ち直り、やはり、わが国経済のリーダーシップを握ってきた。


 その差の生じた原因は、企業保有の技術である。むかしの大商店には、先代から店付きの大番頭というのが、かならずいた。これは、若主人の単なるお目付け役ではない。企業を維持し財力を保有する専門技術者である。


 大番頭は、この場合、現状維持さえやればよいのだから、たいしたことはないと考えたら誤りである。現状維持ができたと考えたときは、じつは退歩であるということを忘れてはならない。というのは、世の中のほうが進歩しているから、相対的にはかならず遅れていく。


 戦後の成金的経営者のなかには、このような意味での失敗者がかなりいた。はやる心をおさえて地盤がために専念したつもりでいたら、じつは経営は左前になっていたということである。

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