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京都ミステリーの現場にご一緒しましょ
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旅行
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はじめに

『京都ミステリーの現場にご一緒しましょ』
[著]山村紅葉 [発行]PHP研究所


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 母・(やま)(むら)()()のミステリー作品のほとんどが、京都を舞台としたものです。それはもちろん、母自身のふるさとであり、熟知している場所だからでしょう。そしてやはり、古いものと新しいものとの対比がおもしろかったのではないかと思います。


 母が描くのはあくまでも“現在”でした。殺人事件のトリックに、そのときどきの最新の家電製品なども好んで使っていました。そうしたメカニックで現代的な事件が、歴史ある神社仏閣や、華道や茶道、日本舞踊といった伝統文化の世界で起こる、そうした新旧のコントラストの妙は、母の作品の持ち味の一つです。


 もう一つ、ミステリー小説につきものの殺人事件は本来、人のもっとも暗い情念が渦巻くドロドロとしたものです。それが、有名人の集うパーティー会場や、紅葉で彩られたお寺、桜が舞い散る花見の宴といった、特別に華やかな場を舞台に繰り広げられることで、かえって、人の世のはかなさ悲しさが際立ちます。テレビドラマ化されれば、そこに生まれるのは(まが)(まが)しくも美しい映像世界……。母が、そうした意図をもって京都を舞台とするミステリー小説を書いていたことは確かです。


 ディスカバー・ジャパン(DISCOVER JAPAN)というキャッチフレーズをご記憶でしょうか。海外旅行ブームの熱狂が少し落ち着き、大阪万博が終了した一九七〇年に、JR(当時の日本国有鉄道)が打ち出した「日本を見直そう」というキャンペーンです。


 古きよき日本がもっともよく残っている場所といえば、やはり京都。しかも、由緒ある祭や昔からの風習が現代の暮らしに息づいているところが、京都の大きな魅力です。京都ブームが日本中を席巻し、流行に敏感な若い女性たちが京都へ京都へと押し寄せました。母の小説を片手に京都観光をする方も少なくなかったとか。


 さらに拍車をかけたのが映像の力。当時、母の作品は次々とドラマ化され、「テレビのサスペンス劇場で観た、南禅寺の水路閣へ行ってみよう」「キャサリンたちが食べていた、(ろく)(せい)の手をけ弁当を食べてみたい」といった目的意識をもって旅する方も少なくなかったそうです。今で言うなら、アニメの聖地めぐりのようなものですね。


 それを知った母は大いに喜び、さらなるサービス精神を発揮します。有名な観光スポットのみならず、その周辺にあるおすすめのお店や、登場人物たちが移動する際の道々の風景なども、ストーリーの隅々にまで丁寧に織り込むようになりました。すべて、母が自分で行ってみて「いい!」と思った場所でしたから、母の作品はミステリー小説であると同時に、信頼できる京都のガイドブックでもあったのです。



 その後もずっと京都の人気は相変わらず。というより、ここ数年ますます沸騰しつつあります。アメリカの大手旅行雑誌『Travel(トラベル)(アンド)Leisure(レジャー)』で、「世界の魅力的な都市」ランキングで二年連続一位に選ばれるほど、世界的なブーム。そんな中、「お母様の小説に出てきた、京都のどこそこへ行ってきましたよ」などと言われると、やはり嬉しくなってしまいます。


 ただ、母は非常に多作な作家で、実に三百六十もの作品を書いており、それらすべてを読破するのは至難の技ですし、ましてや、何冊もの本を抱えて旅行するのは大変ですよね。


 本書は、山村美紗ミステリーのファンの方がコンパクトに持ち歩いていただける京都本ができたらいいな、という思いで書きました。もちろん、娘の私にとっても、京都は生まれ育った大切なふるさと。豪快でありながら()(みつ)このうえなく、自由奔放でありながら義理堅く愛情深いという、人間的魅力に富んだ母と一緒に過ごした思い出深い場所です。


 この本をきっかけに、ドラマファンの方が原作の山村美紗ミステリーも読んでみようと思われたり、たびたび京都を訪ねて、京都の魅力により深く触れてみたいと思ってくだされば、これほど嬉しいことはありません。



 二〇一五年十一月

山村紅葉 

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