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闇のファイル 戦火の陰に潜む人間像
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歴史
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第11章 レイテ沖海戦の真実

『闇のファイル 戦火の陰に潜む人間像』
[著]吉田一彦 [発行]PHP研究所


読了目安時間:21分
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連合艦隊と米海軍の総力戦



フィリピン攻略を主張するマッカーサー




 一九四四年七月二十一日のことである。日本海軍機動部隊によるパールハーバー攻撃によって開始された太平洋戦争は、すでに三年目に入っていた。この日、アメリカ大統領フランクリン・デラノ・ルーズベルトは重巡洋艦ボルチモアに乗り込み、ハワイを目指して出発した。同行者は参謀長のレイヒ(てい)(とく)()い犬のファラであった。


 ルーズベルトは出発の前日にシカゴで開催された民主党大会で、前例のない四選大統領の候補に指名されたばかりであった。ハワイ行きの目的は、公式には太平洋戦域の陸海軍総司令官であるマッカーサーとニミッツの二人と会談して、今後の対日戦略について話し合うというものであった。


 しかし、本来、三軍の長である大統領が統合参謀本部を飛び越えて、直接、実戦部隊の司令官と会談する緊急の必要は存在しなかった。彼の真の(ねら)いはマッカーサーと並んだ写真を撮影させて、選挙戦の道具に使うためだという者もいた。ハワイ訪問には政治的()()()められていたというのである。


 (じゅう)(じゅん)ボルチモアがサンディエゴから出港する直前に、ルーズベルトは日本の(とう)(じょう)(ひで)()首相がサイパン島(しっ)(かん)の責任を取って七月十八日に辞職したことと、前日の二十日にヒトラーが暗殺を(から)くも(まぬか)れたことを伝えられた。ヒトラー暗殺の首謀者は国防軍高級将校のグループであった。戦勢は連合軍側に有利に展開しつつあったのである。


 ルーズベルトが軍事目的と政治目的のどちらに重点を置いたのかは定かでないが、次の対日攻勢の目標をどこに置くかに関して、陸軍と海軍の間を調整して、見解の相違を解消するという重要な課題があった。彼の耳には異なった提案が届いていたので、現地に(おもむ)いて実情を自分の目で確かめたいという()()があった。


 海軍のニミッツはフィリピンを()(かい)して、直接、日本の領土である台湾の攻略を主張したのに対し、陸軍のマッカーサーは一貫してフィリピン攻略を主張して譲らなかった。


 軍事的見地からすれば、海軍側に分があった。台湾を攻略して、そこにアメリカ軍の基地を設置すれば、日本は南方からの石油輸送ルートを断ち切られて戦争継続が難しくなる。また日本全土に上陸作戦を決行する場合には、台湾は出撃拠点として極めて有用である。


 これに対してマッカーサーの主張は、主として政治的動機に基づいていた。彼はルーズベルトに対して、戦争初期にアメリカがフィリピンを見捨てた事実を指摘して、日本の占領からフィリピンを解放しなければ、アメリカに協力的なフィリピン国民の信頼を失うと言ったのである。またフィリピン各地に散在する()(りょ)収容所からアメリカ軍兵士を救出しなければ、アメリカ国民は投票所において必ずや怒りを表明するだろうと、ルーズベルトを(きょう)(はく)した。


 マッカーサーはアメリカにはフィリピンを解放する道義的責任があると言うのだが、自身もコレヒドール(よう)(さい)から魚雷艇で脱出する際に、「私はきっと帰ってくる」(I shall return.)という論議を呼んだ約束をしていたのである。




 マッカーサーは、政治的動物と言われたルーズベルトの痛いところを突いて勝利を得た。大統領はフィリピン侵攻作戦を承認したのである。マッカーサーには自分の約束を実現する機会が訪れた。そして、次の攻撃目標は日本軍ということになる。このアメリカ軍のフィリピン侵攻作戦に(ともな)って発生したのが、レイテ沖海戦(日本側呼称は比島沖海戦)である。


I have returned!



 この海戦は他の海戦と比べて知名度がそう高いわけではないが、実は史上最大規模の海戦であることは記憶に(あたい)する。

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