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二十一世紀をいかに生き抜くか 近代国際政治の潮流と日本
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政治・社会
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第五章 帝国衰退の歴史

『二十一世紀をいかに生き抜くか 近代国際政治の潮流と日本』
[著]岡崎久彦 [発行]PHP研究所


読了目安時間:24分
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 米国の覇権はいつまで続くのですか? これは過去半世紀の日本の安保論争で、私が最も多く受けた質問の一つである。


 一九六〇、七〇年代の安保論争の過程での、その質問のいわんとするところは、日米同盟は大事というが、アメリカの繁栄と覇権はいつまで続くか分からないではないか、日本はそれに備えて自主独立を志向すべきだという、反米、中立、独自外交の思潮が裏にある質問である。


 明治開国以来の日本の安全は、七つの海を支配するアングロ・アメリカン世界との友好、同盟関係にかかっているという私の持論を主張しだしたのは、七〇年安保のころからだったが、当時は、いわゆる対米追随という批判はいまよりもずっと強かった。それもあって、日米関係というのさえ(はばか)って、当時はアングロ・サクソンという言葉を使ったのである。


 そんななかで、右の質問に対して当時まだ四十歳前後だった私はこう答えた。

「国際情勢の見通しなどは、長くて二十年先までしかいえない。私が外務省で勤務できるあと二十年は、米国の覇権は続くと断言できる。それからあとは、二十年後の私の後輩が考えることだが、後輩はそのときに、おそらく私と同じことをいうだろう。そうやって、アングロ・サクソンの覇権は、いずれ衰退、いずれ衰退、といわれながら四百年間続いている」


 あれから二十年が二回、四十年経ったいまの時点でも、いまから二十年後には米国は衰亡すると断言できる人は、どこにもいないのであろう。まして、現在の政策と結びつける必要のない話である。


 その長期的展望を、無理して現時点の日米同盟の重要性の是非と結びつけようとするのは、たんなる反米思想、あるいは冷戦中ならば、共産圏の自由陣営弱体化のプロパガンダのお先棒を担いでいるだけである。



 この本はウエストファリア条約から論じきたって、この章では、十九世紀末に至って、パックス・ブリタニカがその頂点を過ぎて、フランス、ロシア、ついには新興ドイツにその覇権を脅かされるようになる時代に至っているので、ここでは帝国の衰退論に焦点を合わせて論じてみたい。しかし、今日的問題意識からいえば、それは大英帝国の衰退よりも、むしろ昨今しきりに議論されている米国衰退論のほうに重点を置くこととなろう。



 右で見てきたように、日本における米国衰亡論は(ため)にする議論が多く、引用できるほどの理論的根拠のあるものはほとんどない。


 しかし、米国では、自分自身の将来に関することであるので、衰亡論は繰り返し繰り返し出てきている。近くは、二〇一二年の大統領選挙イッシューにまでなっている。


 二〇一二年の選挙戦で、共和党大統領に立候補したロムニーは、一月末フロリダ州で、「オバマ大統領は、世界のリーダーとしての米国の役割はもう過去のものだと考えている」と述べた。そしてロバート・ケーガンの新著を引用して、「われわれの大統領は米国が衰退していると考えている……オバマが大統領であれば、たしかに衰退するだろう。私が大統領になれば、そうはならない」といった。


 これの対抗策としてオバマ側は、国家安全保障担当補佐官のドニロンがトーク番組で、オバマ大統領はケーガンの論文を「たいへん気に入っている」と述べている。



 二〇一二年早々から、米国衰亡論についていくつもの著作が発表された。


 このような長期的な国際情勢を論じる論文において、近々の論文を使うと内容がすぐ古くなる恐れがある。しかし、これをあえて使うのは、ここ数年の経緯で米国衰亡論についてはかなり分析が深くなっているので、新しい論文といえども内容がかなり()れていると信じてよいからである。


 ここ数年とは、まず二〇〇五、六年ごろ以降、イラク戦争が泥沼化した時期であり、大英帝国隆盛の曲がり角といわれるボーア戦争時と比較して、米国の衰退が論じられた。


 そして二〇〇八年にはリーマン・ショックがあり、その後二〇一二年に至るまで、景気の回復ははかばかしくなく、またユーロ危機の影響も受けた。失業率は引き続き高く、国内では所得配分の不公平を訴える大衆デモがウォール・ストリートで燃え上がった。そして、その間、中国経済が飛躍的に増大し、軍事力の増強も著しいなかで、オバマ政権は軍事費の大幅削減を打ち出し、軍事的優位の衰退が懸念されている。

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