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二十一世紀をいかに生き抜くか 近代国際政治の潮流と日本
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政治・社会
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第九章 平和共存と緊張緩和

『二十一世紀をいかに生き抜くか 近代国際政治の潮流と日本』
[著]岡崎久彦 [発行]PHP研究所


読了目安時間:21分
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 米ソ冷戦の歴史をいまさら学ぼうとする最大の目的は、二十一世紀前半における米中関係の参考とするためである。


 おそらく、二十一世紀を通じて米中関係には、かつての冷戦のあいだの米ソ関係のように、緊張の時期、緩和の時期がこもごも訪れることとなろう。


 二十一世紀早々の二〇〇一年春には海南島事件があって、いよいよ米中対決の時期が来たかと予想された。しかし、その年の九・一一以降、アフガン・イラク戦争で十年間、中国から関心が逸らされていた。しかし、その十年間に中国による急速な軍備拡張があり、その実力を背景に中国の態度が次第に尊大となり挑戦的となる政治的変化があった。


 米中関係に緊張と緩和の時期があることは、ブッシュ政権の第一期(二〇〇一─四年)では中国は戦略的競争相手と定義されていたのに、第二期(二〇〇五─八年)では、国務省のゼーリック副長官の下に、責任あるステイクホルダー(利害共有者)となったのが好例である。


 そして、この米中緊張緩和の時期はオバマ政権初年度(二〇〇九年)末のオバマ訪中まで続いたが、その後一転して、米国およびアジア諸国が中国の軍備拡張と南シナ海、東シナ海進出に備える時代となった。


 二〇一〇─一二年になると、中国という言葉は一言も使われていないが、米国、東アジア諸国、豪州、インドなどによる中国包囲網結成の時代となってきている。


 中国という言葉が使われないのは当然である。すでに述べたように、ドイツの脅威を前にして英露仏三国は協商を結び、一九〇七年は協商の年といわれているが、英露協商は南西アジアにおいて、仏露協商はアフリカにおいて、それぞれの対立の種を除いただけであり、ドイツなどという言葉は一言もない。しかしその結果、消去法によって、三国にとって唯一の敵はドイツとなり、それは第一次大戦まで続いた。


 ただ、この米中緊張はそのまま直線的に対決に向かうかどうか分からない。米中の軍事力の較差はまだ中国を決定的な冒険に誘うほどには接近していないということを中国は知っていると思う。


 二〇一二年秋の中国共産党大会以降、権力闘争に一応の終止符を打った中国が、穏健路線に舵を取りなおす可能性も排除できない。


 米ソ冷戦時代を振り返ってみると、キューバ危機やベルリン危機のように、ソ連が強硬姿勢をとったときは、西側内部で対ソ姿勢についてコンセンサスが得られやすく、比較的対処しやすかった。それに反して、ソ連側がいわゆる平和攻勢をかけてきたときの西側は国論が分裂して対応が難しい。とくにジョージ・ケナンのような確立された分析と対策が存在しない相手である中国の場合、中国が平和攻勢に出た場合の対応は容易でないと想像される。米ソ冷戦では、スターリンが平和攻勢に出たときに、すでにケナンの思想と政策が確立されてNATOが結成されていたので、西側は微動だにしなかった。


 本章では、この観点から冷戦の歴史を振り返ってみたい。俗な表現を用いれば、西側がその都度、ソ連・中国に対してタカ派姿勢をとったか、ハト派姿勢をとったかの歴史である。


 ハト派外交を意味する英語のなかで、アピーズメント・ポリシー、すなわち「宥和外交」は現在の英語では悪い意味でしか使われていない。


 すでに述べたように、一九三九年ヒトラーはチェコスロバキアに対して、ドイツ人居住地域ズデーテンラントの割譲を要求した。英国首相ネヴィル・チェンバレンは、ミュンヘンに赴いてヒトラーの要求を容れて平和を守った。そして帰英に際しては、かつて一八八五年のベルリン会議から帰ったときのディズレイリの表現を用いて、「われわれの時代の平和 peace in our time」を達成したと述べ、英国民の喝采を浴びた。しかしドイツはただちにチェコの分割併合に着手し、次いでポーランドにダンチヒを要求し、英仏もポーランドを支持して、もう翌年には第二次大戦が始まった。

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