読みたいトコだけ買える本。
犬耳書店
初めての方へ 記事一覧 無料登録 ログイン
0
-1
kiji
0
1
1216828
0
検事はその時 事件の裏側で何を考えているのか
2
0
0
0
0
0
0
ルポ・エッセイ
お気に入りとは?

お気に入りボタンを押すとお気に入りリストにこのページが追加されます。興味のあるページ・気になったページを後から確認するのに便利です。

お気に入り お気に入り
11 被告人の嘘

『検事はその時 事件の裏側で何を考えているのか』
[著]中尾巧 [発行]PHP研究所


読了目安時間:3分
この記事が役に立った
0
| |
文字サイズ


 被告人が刑を軽くしたいと思って嘘をつくことがある。被告人が嘘をついたからといって偽証罪には問われない。時には、検事も裁判官も被告人にだまされる。


 数年前、若い女性が普通乗用自動車を無免許で運転したとして道路交通法違反で起訴された。女性は、交通違反が重なり、運転免許が取り消された後も、車を処分することなく運転し続け、その間、無免許運転などの罪で二回罰金刑に処せられたが、日常的に無免許運転をしていたため再び検挙された。


 検事は、常習性が顕著な犯行だとして懲役六月を求刑したが、裁判所は、罰金三〇万円の判決を言い渡した。予想外の判決だった。


 罰金刑を選択した主な判決理由をみると、

「被告人は、司法書士となるためH法律専門学校に通ってまじめに勉強し、本年その受験を予定しているところ、懲役刑を選択して相当期間その資格を失わせること(司法書士法五条一号参照)は、現時点において本件を反省し、まじめに勉強している被告人にとって酷である。」

というのだ。


 しかし、懲役刑に処せられても、刑の執行が猶予されると、受験すること自体何ら支障がなく、仮に受験して合格すれば、その猶予期間中は司法書士の登録が拒否されるにすぎない。そうすると、受験を予定していることは特別な配慮を必要とする事情とはいえないだろう。判決の理由は根拠が薄く、控訴すべき事案だと思った。


 それにしても、被告人が法律専門学校に通って受験勉強中というのは、どうも話がうますぎる。何となくうさんくさいものを感じた。H法律専門学校に被告人の在籍の有無を問い合わせるなどの補充捜査をさせることにした。


 数日後、担当検事から、

「被告人がH法律専門学校に在籍した事実はありません。被告人がD大学文学部卒というのも全くの嘘でした。」

という報告を受けた。まさか学歴まで詐称していたとは驚きだった。


 早速、量刑不当を理由に控訴したところ、高等裁判所は、一審判決を破棄し、被告人に懲役六月、三年間刑の執行を猶予する旨の判決を言い渡した。


 昔から、「検事はだまされて成長する。」といわれているが、一つでも疑問があれば労を惜しまず捜査を尽くすことが大切である。



  【関係法令】


   道路交通法第一一七条の二の二(罰則)


    次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。


     一 法令の規定による運転の免許を受けている者(中略)でなければ運転し、又は操縦することができないこととされている車両等を当該免許を受けないで(中略)又は国際運転免許証等を所持しないで(中略)運転した者


     (以下略)


   司法書士法第五条(欠格事由)


    次に掲げる者は、司法書士となる資格を有しない。


     一 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつてから三年を経過しない者


     (以下略)


   刑法第一六九条(偽証)


    法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処する。

この記事は役に立ちましたか?

役に立った
0
残り:0文字/本文:1250文字
      この記事を収録している本
      レビューを書くレビューを書く

      今レビューすると30ポイントプレゼント! 今レビューすると15ポイントプレゼント! 犬耳書店で初めてのレビューはさらに30ポイント! ポイント詳細はこちら

      この本の目次