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指導力の研究 組織社会を勝ち抜く法
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第六章 ドイツ参謀本部の組織論

『指導力の研究 組織社会を勝ち抜く法』
[著]渡部昇一 [発行]PHP研究所


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専門外のドイツ軍に興味を持ったのは……


 リーダーと組織、スタッフのことについて私が多少考えるようになったのは、ドイツの参謀本部のことを研究したためである。


 この章では、リーダーと組織論ということを、形を変えて、具体的なドイツ参謀本部の例に則して考えてみたい。

ドイツ参謀本部』(中公新書)という本をどうして書くことになったのかと時々聞かれることがある。昭和三十年頃、ドイツ留学中に、ドイツの軍隊、とくにドイツ近代史における軍事的組織の役割について興味を持ったのが、そもそものきっかけである。


 私の専門は言語学、とくに文法史の研究であり、そのために留学したわけだが、その折、私は自分の西欧についての無知を色々な点でいやになるほど思い知らされた。それで専門の論文を書くかたわら、自分の今まで知らなかったことで興味をそそられたことは、どんなことでも幅広く調べてゆこうと考えたわけである。


 ある時、たまたま知人の家族と芝居を見に行ったところ、もとのドイツの空軍大将夫妻と一緒になった。単純ではあるがそれが機縁で、ドイツの軍隊に興味を持ち始めた。そして調べているうちに、ドイツの近代史はドイツの軍隊を抜きにしてはわからない──それは、日本の明治以後の歴史が、日本の陸海軍の問題を抜きにしては語れないのと同じではなかろうか、と考え始めた。そしてドイツ近代史はヨーロッパ近代史の台風の目であり、それがわからないとヨーロッパもわからない、そこで、自分なりにわかろうと考えて、目につく資料や本を買い始めたわけである。


 日本へ帰ってしばらくすると、林健太郎先生の、名著『ワイマール共和国』(中公新書)が出版され、読んで大変感銘を受けた。ただ、その時に思ったのは、林先生は政治史としてのワイマールを描いていらっしゃるわけで、軍部についての言及はどうしてもつけ足しになってしまう、ということであった。「軍部から見たドイツ史があってもよいのではないか」という思いが浮かんだ。


 われわれはビスマルク以後の近代ドイツの首相の名前を一つも覚えていないだろうが、参謀総長の名前は、少し歴史に興味ある人なら、だいたい皆覚えている人もいるほどだ。そうした意味でも軍隊が占める比重は非常に大きい。それなのに、われわれの手に入るドイツ史に関する書物を見るかぎり、それが殆ど扱われていない。このことが直接動機となって、それまで集めていた資料(集め始めて十数年たっていた)をもとに、『ドイツ参謀本部』を書いたわけである。


組織論①──たった一人の天才リーダーvs.均質なスタッフ


 ドイツ参謀本部が生まれた直接の引き金はナポレオンの戦争であり、その背景にあるのは徴兵制である。ナポレオンは確かに戦いの天才だった面もあるが、彼が勝った最大の理由は徴兵制度だったと言える。フランス革命以前のヨーロッパでは傭兵が普通で、傭兵ならば百人雇うにも諸侯にとっては大変な出費になる。ところがナポレオンはフランス革命の作った徴兵制によって、兵を十万単位で集め、最終の延べ動員数は二百万というから、当時のフランスの人口からみて大変な数である。またそれまでのヨーロッパの知らない大軍であった。それに傭兵なら、イヤな時に逃げ出してきても、たまたま捕らない限り追及はされない。ところが徴兵制だと、村単位で根こそぎ持っていかれるから、脱走兵が帰るところがない。そういう意味でも、これは近代が発明した最も残酷な制度だと言えよう。それに一カ国が徴兵制をしく、それに対応するため他の国でも必ずそれをやらなければならなくなるので、戦いの様式がまるで変わってしまうことになる。


 今までの傭兵だと、どんな金持ちの諸侯だってたいして集められないから、フリートリッヒ大王(在位一七四〇─八六)のような有能なリーダーがいれば、あとは強引にリードできる。ところが徴兵制になると数が多いから個人の力では統率できない。


 ナポレオンは師団制度を考え出したのだけれども、その師団制度でも、ナポレオンがうまく使いこなしたのは数万にすぎない。

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