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マザー・テレサ 愛と祈りのことば
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ルポ・エッセイ
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『マザー・テレサ 愛と祈りのことば』
[著]マザー・テレサ [編]ホセ・ルイス・ゴンザレス・バラド [訳]渡辺和子 [発行]PHP研究所


読了目安時間:3分
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 マザー・テレサが八十七歳で神のみもとに召されてから、いつしか三年の年月が流れました。この度、『マザー・テレサ 愛と祈りのことば』が、文庫本として出版されることになりました。


 訳した本をマザーにお手渡ししたかったのに、それが叶わず、一九九七年十一月、私はお墓詣りもかねて、用事のため、カルカッタへ行きました。本部の修道院に入り、一年前ご一緒に祈ったチャペルに足を踏み入れて、私は息をのみました。お亡くなりになったはずのマザーが、いつもの場所に、いつもの少し前かがみの姿勢で祈っていらしたからです。


 それがマザーの像であることに気づくのに、さほど時間はかかりませんでした。シスターたちは、まるでマザーがまだ生きていらっしゃるかのように、活気に満ちて活動を続けていらしたのでした。


 マザーのご遺体は、入口を入ったすぐのところに埋葬されていて、その場所には、白布のかかった大きな台が置かれ、台の上に、いくつかの花輪と、多分ご遺体の頭部に当たるところでしょうか、一枚の大理石の板が置かれてありました。その板には、マザーの生年月日と帰天の年月日、「神の愛の宣教者」という修道会の創立者である旨が書かれ、さらに、聖書の次の言葉が英語で彫ってありました。

私があなたがたを愛したように、あなたがたも、相愛しなさい」


 マザーの一生は、このキリストの言葉に要約されているといっていいでしょう。キリストが行った無償の愛を、二十世紀後半に、人々の間で実行した人でしたから。宗教、民族、年齢、性別、社会的地位等にいっさい関わりなく、必要とする人々に愛の手を差し伸べた人でした。


 マザーが帰天された後に残っていたものは、着古したサリーとカーディガン、古びた手さげ袋と、すり切れたサンダルだけだったと言われています。目に見える遺品は誠に(わず)かで貧しいものでしたが、マザーは、計り知れないほどの、“目に見えない”遺品を残して世をお去りになっています。


 二十世紀は、数々のすばらしい文明を産み出しました。しかし同時に、その同じ文明の所産は多くの悲劇を人々にもたらしたのでした。めざましい医療の発達は、その陰で、医療の恩恵に(あずか)れない貧しい人々をも産み出していました。物の豊かさを追い求めて、人々はいつしか心貧しくなっていたのです。


 その中で、小柄なマザー・テレサの姿が私たちに教えてくれたのは、人間性の中にある美しさ、希望といってもいいでしょう。人の心を満たすものは、愛であり、私たちはいつも、大いなる存在の前に謙虚に生きねばならないという真理を遺産として残して、天に旅立たれたのです。


 文庫版の出版に当たり、PHP研究所の瀬間芳恵様のお世話になりました。感謝しています。



 二〇〇〇年八月

渡辺和子 


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