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日本の「情報と外交」
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政治・社会
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第三章 情報のマフィアに入れ──オイルショック(一九七三年)

『日本の「情報と外交」』
[著]孫崎享 [発行]PHP研究所


読了目安時間:23分
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 石油危機のメッセージを見逃す


 第二次大戦終結後、日本人が不意をつかれた世界情勢は多々ある。


 一九七一年七月、米国は突然、ニクソン大統領の中国訪問を発表した。第一次ニクソン・ショックである。さらに変動為替相場制への移行も突然、発表した。第二次ニクソン・ショックである。


 日本政府は、同盟国米国が次々と打ち出す通告を事前に知らない。「外務省の情報収集能力はどうなっているのだ」という激しい非難が出た。さらに一九八九年十一月のベルリンの壁の崩壊も、外務省は予測していなかった。


 不意をつかれた事件は数多くある。そのなかでも、一九七三年十月のオイル・ショックは国民を大混乱に導いた。政府は緊急の対策要綱を発出した。室内温度の適正化(二〇℃)、広告用照明の自粛、高速道路における高速運転の自粛や、一般企業への一〇%の電力節減を盛り込んだ。不安に駆り立てられた国民は、トイレットペーパーや洗剤など、原油と直接関係のない物資の買占めを行なった。この混乱の一因は、オイル・ショックがある日突然起こり、日本社会でほとんど誰もが予測していなかった点にある。


 しかしこの時期、私の情報に対する感覚が鋭敏なら、オイル・ショックを事前に警告できた。しかし、私にはまだその能力がなかった。


 米国国務省に政策企画部がある。一九四七年ソ連封じ込め政策を提言し、冷戦の基本構図を作成したジョージ・ケナンが初代部長である。国務省の頭脳集団といってよい。


 歴代の政策企画部長には、ジョージ・ケナンに加えて、ポール・ニッツェ、ウォルト・ロストウ、ポール・ウォルフォヴィッツ、デニス・ロス、リチャード・ハースなど、米国安全保障論議の中核になった人物が揃っている。いずれも米国の外交・安全保障の重要な局面に関与してきた人物である。日本に比較的馴染みのある人物には、元中国大使ウィンストン・ロードがいる。彼は一九七三年から七七年の政策企画部長である。二〇〇九年四月、ロードが訪日したときは、会議で一緒になった。


 日本外務省における政策企画部門の歴史はそう古くない。戦後、外務省は賠償等の戦後処理、経済復興に忙殺されていた。しかし、そろそろ自らの外交を思索すべきであるとして、政策企画部門を委員会ベースで立ち上げた。一九六七年当時の(さい)(とう)(しず)()外務大臣官房長が政策企画を(もつぱ)ら任とする組織をつくるべしとして企画課を創設、初代課長に(むら)()(りよう)(へい)氏(のちに外務次官)が就いた。その後も外務省内で知的水準が抜きん出ているとみなされる人物が歴代、企画課長の座についた。ここが対米協議を開始した。


 一九七三年春、私はバージニア州のボアズ・ヘッドで開催された日米政策企画協議に参加した。英国・ソ連でのロシア語研修後、駐ソ連大使館勤務をし、最初の本省勤務が情報調査部分析課であった。私は中ソ関係、ソ連動向を担当していた。一九七〇年代初頭は国際政治の激動の時代である。


 七二年二月にニクソン大統領が訪中した。米ソ間では核兵器の戦略交渉が実施されている。八月、朝鮮半島で南北赤十字本会談が開始された。日米間で真剣に討議すべき国際情勢は山のようにあった。そのなかで、米国はサウジアラビア問題を協議しようといってきた。私には、なぜサウジアラビアを協議しなければならないか、まったく解らなかった。たぶん、日本側の出席者の誰も解らなかったのではないか。


 しかし、この時期、国際関係の評論を読み込んでいたなら、サウジアラビア問題がきわめて重要であることに気づいていたはずだ。『フォーリン・アフェアーズ(Foreign Affairs)』誌一九七三年四月号は「石油危機:今回こそ狼はここにいる(The Oil Crisis; This Time the Wolf Is Here)」と題するエーキンズ(Akins)国務省燃料・エネルギー部長の論文を掲載していた。論文の主旨は次のようなものである。



 ・石油資源は有限である。


 ・アラブ諸国はこの石油を、イスラエル・アラブ間の政治紛争で政治的武器として使用しようとしている。


 ・このなか、サウジ国王のみが政治的利用に反対している。

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