もしここに、ジャガイモほどもある石ころを人に向かって投げつける奴がいたならば、それは確かに刑法によって罰せられるべき暴行に属するであろう。そしてもしまた、その石ころをば、棒切れで相手めがけて打ち返すならば、それは「売られた喧嘩を買う」というべき行いで、これは喧嘩両成敗ということになるかもしれぬ。

　こういう剣呑なる一連の行いを、平気で実行して、あまつさえ嬉々としてその死地に臨むとを以て良しとする「野球」というスポーツがあるのは、はなはだ不可思議であると言わざるを得ぬ。

　しかも、より危険なる高速度で石を投げたるものを名投手と称し、もっとも乱暴なる勢いでそれを打ち返すものを強打者ととなえて、あたかも一世の英雄の如く言いそやすにいたっては、まことに啞然たらざるを得ない。