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リンボウ先生の閑雅なる休日
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ルポ・エッセイ
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詩人・酔人(すいじん)・粋人(すいじん)

『リンボウ先生の閑雅なる休日』
[著]林望 [発行]PHP研究所


読了目安時間:8分
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 (こう)(がん)の美少年、いや違った、ニキビ(づら)のブ少年だったころ、一つの夢があった。

「詩人になりたい」


 そう思って、私は、日々()()()あたりの裏町を、ぼんやりと(はい)(かい)していた。どうして浅草、吉原、新宿ゴールデン(がい)、あるいは赤坂、六本木、川向こうの(むこう)(じま)(たま)()なんぞじゃなくて早稲田かというと、早稲田に住んでいたからである。当時の早稲田は、なんだかくすんだようなばっとしない学生町で、黒ずんだ木造の下宿屋だの、幕末から営業しているという寿司屋だの、私の父が早稲田中学に通っていたころから変らない蕎麦屋だの、江戸名所()()にも出ている八幡さんだの、お稲荷さんだの、それに、そうそうオノレも油揚げと一緒に醬油で煮しめたんじゃないかと思われるようにしわだらけの黒い顔した(ばあ)さんが作って売っている稲荷寿司屋だの、能の『(たい)(へい)(しよう)(じよう)』に出てくるような大きな(つち)(がめ)で芋を吊るして焼いているつぼ焼き芋屋だの、そんなものがごたごたと並んでいて、あとは(おびただ)しい数の古本屋、定食屋、()()蕎麦屋、早稲田の学生がぞろぞろと歩いていく歩道には、時たまあの座布団帽子を被った時代錯誤の学生さんが、どうしたわけか、大きな焼き芋を(かじ)りながら歩いていたり、ともかく渾沌雑然とした(まち)(がら)だった。

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