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ヒトゲノムのすべて
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人文・科学
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文庫版のためのまえがき

『ヒトゲノムのすべて』
[著]中原英臣 [発行]PHP研究所


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 最近、新聞やテレビなどでヒトゲノム計画という言葉をよく耳にします。二〇〇〇年の六月二十六日、当時のアメリカ大統領ビル・クリントンとイギリスのブレア首相がテレビに登場し、ヒトゲノムが解読されたという発表を行ったことは記憶に新しいことと思います。

 ヒトゲノム計画というのは、人間のDNAに書かれている遺伝情報をすべて解読しようという国際的な巨大プロジェクトです。私たち人間をはじめとする地球上のすべての生物の遺伝情報は、DNAを構成するアデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)と呼ばれる四種類の文字で書かれています。この人間のDNAに書かれた塩基(えんき)配列をすべて解読するのがヒトゲノム計画なのです。

 このヒトゲノム計画の成果は、二〇〇一年二月に国際研究機関とセレラ社によって『ネイチャー』と『サイエンス』に発表されました。そこに書かれてあることのなかで、もっとも意外だったのは、地球上でもっとも進化した生物といわれる私たち人間がもっている遺伝子の数が予想以上に少なかったことです。

 これまで多くの科学者によって、少なくとも十万個はあるといわれてきた人間の遺伝子数が、国際チームでは三万千七百七十八個、セレラ社の計算でも三万九千個くらいしかないことが明らかにされたのです。この数字はショウジョウバエの遺伝子数である一万三千三百三十八個のほぼ二倍しかありません。

 その一方で、人間の体内では約二十万種類のタンパク質が作られていることがわかっています。そのため、一個の遺伝子が複数のタンパク質を合成していることになります。これまでは、一つの遺伝子が一つのタンパク質を合成していると思われてきました。ところが、どうやら人間の遺伝子は一つでなく、複数のタンパク質を作っているようです。これからは、こうしたメカニズムについて研究が進められることになるものと思います。

 ヒトゲノムの解読を巡っては、世界中の公的研究機関と民間のベンチャー企業との間で、激烈な争いが起きました。その理由は簡単です。解読されたヒトゲノムの遺伝情報そのものが、ビジネスとして巨大な利益をもたらす可能性があるからです。

 そうした可能性について具体的な話をひとつだけ紹介してみたいと思います。二〇〇一年四月、武田薬品工業はぜんそくを起こす遺伝子を発見したという論文を『米国科学アカデミー紀要』という世界でもっとも権威のある科学誌に発表しました。今後、武田薬品工業がぜんそくの原因となる遺伝子の働きを抑えるクスリの開発に成功すると、ぜんそくの患者さんにとって大きな福音となるのはもちろんのことですが、企業にとってもビッグビジネスになると思われます。

 こうしたヒトゲノムについての話をまとめた『ヒトゲノムのすべて』を昨年七月に上梓させていただいたわけですが、文庫出版部の大久保龍也編集長のありがたいお勧めで、改めて文庫として出版させていただくことになりました。

 わずか一年の間にも、ヒトゲノム計画の成果が次々にビッグビジネスになりつつあることは、先に紹介した武田薬品工業の研究でも明らかです。さらに、二十一世紀における産業のキーワードは「IT革命」と「ゲノム革命」といわれています。どうにも調子があがらない日本経済が、ゲノム革命というエンジンによって新たなる発展を遂げることを期待してやみません。


 二〇〇一年五月
中原英臣 
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