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こまってしもうた 忘れてしもうた
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ルポ・エッセイ
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石塚さんと女番長

『こまってしもうた 忘れてしもうた』
[著]安藤りつ [発行]PHP研究所


読了目安時間:8分
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 このところ石塚完治さんは、簡単に手や足が出るようになってしまった。


 (つえ)は人を(たた)く道具でしかなくなった。杖がなくても歩けないわけではないので、預かるという言葉で石塚さんから取り上げたいのだが、うまくいかない。


 寝転がっている(おか)(もと)ちよこさんを()()ばしたり、歩き回る人を杖でつつくこともあった。(はい)(かい)する者への暴力は、徘徊する側に配慮すれば解決できることなのだが、あるとき、前を歩く()()(ふさ)()さんの頭を杖でつついてしまったのだ。


 宇野さんは契約書を引っ張り出してきて、即刻追い出してくれと鼻息が荒い。入居の規約の中に、他の利用者に危険を与えるような行為がある場合には退所の旨が掲げられている。


 呼び出された家族によって、すぐに杖が取り上げられた。

「おとうさん、いいかげんにして」


 石塚さんの部屋から、五十歳くらいの娘さんの声が悲鳴となって響く。

「ここ出されたら行くとこないんだからね」


 娘さんの声は泣き声に変わる。

「うるさあい、出ていってくださあい」


 石塚さんも叫ぶ。

「その杖がいけないの、杖を持っていたらここにいられないのよ、おとうさん」

「テレビを()るから出ていってくださあい」


 しばらく同じようなせりふの言い争いが続いて、やがて顔を真っ赤にした娘さんが杖を持って出てきた。

「明日、病院に連れていってもらえます? 先生には私から相談の電話を入れておきます」

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