もしタイムマシンがあって、自分の歩んできた歴史を自由に書き換えることができるとしたら、あなたは何をどう変えたいですか?
「あれが変われば、きっと今はもっといいはずだ」と思える何かがあるとしたら、それは何ですか?
「あれさえ起きなければ」
あなたの人生にそんなことはありますか?
誰の人生にも、こうでない方がよかった、あるいは、どうしてこんなことが起こったのだろうと思わざるを得ないような出来事というのはあるものです。
かくいう私の人生にも、それはもういろいろあります。できれば起きてほしくなかったことや、自分の愚かな失敗によって招いてしまった最悪の事態など、言い出したらきりがありません。
「できればこうでない方がよかったな」と思う多くの事象の上に、自分の人生を築き上げていると言っても過言ではないと思います。
私は牧師、またカウンセラーとして、多くの人に出会い、多くの人と対話をしてきましたが、過去を振り返ったときに、良いことばかりで、何もかもが理想的だったと考えている人に出会うことはありません。
ほとんどの人が、イヤな出来事や思い出したくもないこと、あるいは不都合なことをたくさん体験してきているし、そういう体験の方が多かったと振り返る人が圧倒的に多いのです。
それでも、たくましく生きている多くの人たちに会い、彼らの姿を見て力を得ることがなんと多いことでしょうか。
ところが、中には、自分が体験してきたイヤな出来事に圧倒されそうになってしまっている人もいます。過去のイヤな出来事によって傷を受け、自分の心がそれによって、今も影響を受けてしまっているという人です。
実のところ、こういう人はとても多いのです。
私は立場上、そういう人々の相談を受けるわけです。
人は基本的に、過去に起こった何かの出来事について相談にやってきます。
私たちが体験するすべては、その瞬間に過去の出来事になってしまいます。つまり私は、常に人々の過去と対面している立場であると言えるでしょう。
私の目の前で、相談のために席に着いている人がいるとしたら、私はその人の人生の過去に起こった何らかの出来事について聞くことになります。
その人が悩んでいるとしたら、それは、その人がこれから私に語ろうとする過去の出来事が、その人の現在の心に影響を与えているからです。
悩みや心配、あるいは不安は、皆過去の体験にもとづいています。
それだけでなく、過去はあなたの人格にも大きな影響を与えています。
過去に体験したこと、過去に受けた愛情の質、育った環境、両親との関係、友人関係、恋愛の体験などなど、言い出したらきりがありませんが、ようするに、過去は私たちの人格を形成する大きな役割を果たしてきたのです。
別の言い方をすれば、過去の出来事は、あなたの性格や人格の一部として、あなたの中に形を変えて生き続けているのです。
人は皆、過去の副産物です。
すべては過去に起こったことの積み重ねの結果なのですから。
また、皆過去の犠牲者でもあります。
良いことばかりが起こったわけではないからです。
多くの傷を受け、数えきれないほどの涙が流れてきました。
私もあなたも同じ立場です。
ところが、ある人々は受けた傷を乗り越えることができず、波にもてあそばれる草のように過去に翻弄され生きています。
しかし、ある人々は過去をステップにして飛躍していきます。とてつもなく大きな不幸やイヤな出来事を体験しても、なお力強くそれをバネにしている人もいるのです。
この違いは、すでに起こってしまった出来事とどう付き合っていくかという対応力の違いです。
人は、過去の日々との正しい付き合い方を身につけなければ、充足のともなう満ち足りた人生を歩むことができません。過去とどう向き合い、どう対応するかは、あなたの人生のクオリティを決するほど大事なことなのです。
実は、これがなかなか難しいものです。私が受ける相談の多くは、過去との付き合い方がうまくないことによって起こっているものです。
この本は、過去の自分とうまく付き合い、それを乗り越え、素晴らしい未来をつくり上げるための手助けをするものです。
私たちは、誰も過去を変えることができません。
しかし、未来を変えることはできるのです。人が皆、過去の副産物だからと言って、過去に体験してきたことの奴隷となって生きていく必要はまったくありません。
私たちは常に変わることができます。
過去を変えるのではなく、自分を変えていくことによって、未来を変えるのです。
この本で分かち合うことは、あなたが今日から実践できることです。
過去をエネルギーにして、さらに力強く羽ばたくために、少しでもあなたの役に立てることを期待しています。