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「都市の正義」が地方を壊す 地方創生の隘路を抜けて
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政治・社会
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はじめに

『「都市の正義」が地方を壊す 地方創生の隘路を抜けて』
[著]山下祐介 [発行]PHP研究所


読了目安時間:4分
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 ある人々から見れば当然と思える価値や正義が、実は全体を崩壊させるような内実をはらんでいることがある。ここで「都市の正義」という言葉で表現しようとしているのはそういうものだ。


 平成二十六年九月にはじまった「地方創生(まち・ひと・しごと創生)」は、都市の正義が地方へ、あるいは農山漁村へと露骨な侵蝕をはじめた重要な一歩だった。本書では、この四年ほどの地方創生の経験を振り返りつつ、その批判的総括を試み、あらためてよりよい中央と地方のあり方、都市と農村のあり方について考えてみたいと思う。


 筆者はすでに地方創生(まち・ひと・しごと創生)本部のスタート直後(平成二十六年十二月)に『地方消滅の罠』(ちくま新書)を(じよう)()し世に問うている。その後この書がきっかけで全国の様々な方とお話しする機会があり、その認識を更新してきた。本書はその後の約三年半の間の筆者の「地方創生の経験」でもある。


 この本の読者としてはだから、地方創生に取り組む地方自治体の職員や議員のほか、様々なプロジェクトに関わっている企業や民間、地域の方々を想定している。だがそれ以上に「地方創生など関係ない」と考えてしまっているふつうの都市住民の読者を念頭に論述を行ってみた。


 というのも、地方創生が解決しようとしている問題は、地方のみ、農山漁村のみの問題ではないからである。


 地方創生の本来の目標は、これからはじまる急速で急激な人口減少を止めることにあった。そしてそのために、人口減少の原因となっている東京一極集中を阻止する──そういう話だったのである。


 日本社会の人口減少は、地方のみならず首都圏を含めた国民全体の課題である。そして東京一極集中はこの国の構造そのものだから、首都・東京こそがこの問題の中心的な当事者であるはずだ。


 にもかかわらず、国民の多くがこの地方創生をまるで対岸の火事のように感じ、「地方よ、頑張ってね」と人口減少問題をまるで地方に責任があるかのように押しつけてしまっている。そして地方に「稼げよ」とせっつき、あるいは地方/農山漁村を可哀想な弱者とみて、ふるさと納税や地域産品の購入を通じて支援してあげましょうなどと、上から目線で現状を理解し、それで済ませているようだ。


 全体の一部だけに責任を押しつけようとしても、それでは日本という国が抱える問題は解決しない。それどころか、目的を外れた事業や政策が現場に無理を生じさせ、場合によっては暴力にさえ展開する。一方的な都市の正義ではじまった地方創生には、この暴力性がつきまとって離れなくなっている。


 だが、本書で最も考えたいと思っているのは実は次のことだ──まさにこの「都市の正義」こそが止まらない人口減少の原因であり、また東京一極集中の正体だということである。


 私たちがいま、都市や東京を基準にして当たり前と思っている価値観こそが、東京一極集中を推し進め、人口減を止まらなくしているものの正体だ。多くの人が東京一極集中とそれがもたらす人口減少を経済的問題としてとらえているが、それは間違いだ。すべては価値の問題であり、誤った正義がもたらす罠なのである。そうした議論を地方創生の経験を材料にしていきたい。


 国民の多くが、この国が抱えている本当の問題に目を向けること。その現実に向き合うこと。このことがこうした都市の正義の暴走を止めて、真の地方創生、この国の再生を目指すための第一歩となる。人口減少を止め、地方創生を成就させるためには、中央/都市の側に暮らす人々の、正しい自己認識/国家認識の醸成がどうあっても不可欠である。


 筆者は地方創生(まち・ひと・しごと創生)を、その発端となった時点からずっと観察してきた。日本創成会議のレポート発表(平成二十六年五月)からもう丸四年、地方創生の本格稼働(平成二十七年四月)からでも丸三年が経つ。本来、人口減少と東京一極集中に向き合うためにはじめたはずのこの政策に、様々な思惑や欲望が織り込まれて、複雑怪奇なものに変貌してしまった。話は大変こじれており、もはや各自治体の現場でこれを解きほぐすのは容易ではなさそうだ。しかしまた地方創生は、その主旨からいってやり遂げねばならないこの国の将来に関わる重要案件であることも事実である。その内実を解きほぐし、適切で、あるべき地方創生のあり方を探っていかなければならない。


 地方創生が解決しようとしている課題とは何か、今一度確認することから本書は始めたい。実はこのことからしておかしなくらい曖昧なまま大切な時間が過ぎてしまったようだ。本書ではまずそこから考察を始めていくことにしたい。

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