日本人には、遠慮深い人が多いように思う。
人から、「仕事ができる」「能力が高い」「人柄がいい」などとほめてもらっても、「いえいえ、自分なんて……」と謙遜して、その言葉をまっすぐ受け取らない。
その心のうちには、「自分なんてまだまだ未熟だ」「もっとがんばらなければ」といった、おごりを抑える気持ちや、努力を忘れて怠慢になるのを恐れる気持ちがあるのだろう。
勤勉で慎み深い性格は、とても好ましい、尊敬できるものだ。
しかし、なかにはそれが行きすぎてしまう人もいる。
ほめ言葉をほめ言葉として受け取らず、その真意を探ろうとしてしまうのだ。
「仕事ができる」といわれたら、「もしかしたら、仕事のやり方が強引だと思われているのかもしれない」「人を押しのけるような、差し出がましい人と思われているのかもしれない」などと不安になってしまう。
能力や人柄をほめられても、「本当なのだろうか、言葉とは違う意味があるのではないだろうか、もしかしたら自分は反感を買ったりしていないだろうか……」と、気にやんでしまうのだ。
こういった傾向は、頭がいい人に多い。
頭のいい人は分析力があるので、いろいろなところから数字や資料、経験知を集めてきて、何事も先を予測しようとする。
そういった能力や性質は、ビジネスではおおいに役に立つはずだし、また、実際に役に立っているからこそ、人間関係のなかでも応用しようとしてしまう。
しかし、人の気持ちは「もの」ではない。
数字や過去のエピソードを集めたところで、相手の本心を割り出すことなどできはしない。
相手が考えていることなど、本人以外わかりっこないのだ。
だからこそほめ言葉は、「ありがとうございます」と、素直に受け取るのが正しい。
立場を逆にしてみれば、よくわかるだろう。言葉のひとつひとつをいぶかしがる人より、笑顔で素直に受け取ってくれる人のほうが、ずっとつきあいやすいはずだ。
素直な気持ちのやりとりが、ストレスのないコミュニケーションを作る。
ヒント 相手の言葉を信頼し、まっすぐに受け止めるのがコミュニケーションの正解