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世界のエリートが学んでいる教養としての哲学
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ビジネス
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ツール2 思考 ビジネスに使える「思考法」

『世界のエリートが学んでいる教養としての哲学』
[著]小川仁志 [発行]PHP研究所


読了目安時間:36分
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 ツール2では、ビジネスに使える哲学的思考法ベスト20を紹介しています。いったいどのような考え方がどう使えるのか、自分のかかわる具体的なビジネスシーンを思い浮かべながら読んでいただけるといいでしょう。

思考法としての「相対主義」


 ビジネスにも使える思考として、まずプロタゴラスの相対主義を紹介したいと思います。プロタゴラスは、古代ギリシアで「徳の教師」と呼ばれたソフィストの重鎮です。彼らは街の中で青年たちに弁論術を教えていました。ソフィストの問題は、相手の説得を過度に重視するあまり、真実の探求をないがしろにしていた点です。そこで哲学の父ソクラテスが議論を挑んだのです。彼らが議論する様子は、プラトンの『プロタゴラス』に熱く描かれています。

 プロタゴラスの言葉の中で最も有名なのは、「人間は万物の尺度である」というものでしょう。

 つまり、人間は事物のあり方の尺度だと主張しているのです。事物のあり方は、それを知覚する人間の認識に深く関係しています。とするならば、認識する人間を離れて、事物そのもののあり方を語ることは無意味だということになります。物事は常に、それを認識する人間によって別の意味を与えられるのです。

ビジネス思考への応用

 プロタゴラスの相対主義のポイントは、一見正反対の物事の中に視点を変えて共通点を見出し、それによって差異を相対化してしまうことです。この部分が相対主義の本質だといっていいでしょう。

 そこで、ビジネスの成功と失敗にこれをあてはめてみましょう。両者は一見正反対であるかのように思われます。でも、何が成功で何が失敗かというのは、一義的には決められないものです。失敗だと思ったことが、長い目で見ると成功につながっていたということもあるはずです。

 したがって、ある状況を成功だとか失敗だとか感じるのは、意識の問題なのです。絶対的な失敗などありません。相対主義的に考えて、前向きにとらえればいいのです。逆に絶対的な成功もありません。だから常に努力し続けることが大事なのです。

思考法としての「イデア説」


 古代ギリシアの哲学者プラトンは、師ソクラテスの崇高な理想を受け継ぎ、まさに永遠の理想としての「イデア」という概念を掲げました。そこで彼は、現実の世界のほかに、理想の世界としてのイデア界を想定したのです。

 イデアとは、そのイデア界に存在する物事の本質のことにほかなりません。したがって私たちには、肉眼でイデアを見ることはできません。それは魂の目によってはじめて見えるというのです。他方、日ごろ私たちが目にしているものは、このイデアの影にすぎないといいます。つまり、まやかしにすぎないのです。

 普段私たちが目にしている物事は感覚的なものであり、不完全で、かつ時間と共に生成消滅します。ところが、イデアは非感覚的なものであって、完全で、かつ永遠に変化することもないのです。だからそれは永遠の理想状態でいられるのです。

 では、どうすれば常にイデアを見ることが可能になるのか? ここでプラトンは、アムネーシスせよといいます。想起せよということです。つまり、イデアは心の中で想起することによってのみ見えるというわけです。

ビジネス思考への応用

 プラトンのイデア説を思考法の1つとしてとらえると、次のようにまとめることができるでしょう。まず大前提として、目に見えるものはすべてまやかしだとみなすこと。そして、本質を想起するべく、よく頭を働かせることです。

 プラトンは、「洞窟の比喩」という面白いたとえを用います。洞窟の中で壁に向かって座らされている人は、背後で起こっている物事の影しか見ることができません。だから猛獣を象った紙の影絵を見せられても、本物だと思って恐れるというのです。

 この恐れを取り去るには、魂の全面的方向転換をするよりほかありません。それは頭でよく考えることを意味するのです。猛獣にしてはやけに静かだなとか、こんなところにいるはずがないなというふうに。そうしてはじめて、本質は姿を現すのです。

 ビジネスシーンでも、いったい何が本質なのか、いったん目を閉じてよく考えてみることが必要だといえます。

思考法としての「無知のヴェール」


 無知のヴェールとは、アメリカの政治哲学者ジョン・ロールズが、代表作『正義論』において論じた概念です。ロールズは公正な分配によって正義を実現しようとしました。そのために、格差の是正を行う方法を考えたのです。

 そこで彼が持ち出したのが、無知のヴェールという思考実験でした。あたかも無知になるヴェールをかぶるかのように、自分自身の情報を遮断すれば、人々は等しく合理的で、同じ状況に置かれるとします。そうすることではじめて、他人のことについても同じ条件で正義を考えられるようになるというのです。

 つまり、一人ひとりが自分自身の個別の情報を忘れてしまうヴェールをかぶれば、冷静かつ客観的に他者の困っている様子がわかるだろうということです。他人の立場にたって考えないと、真の正義は判断できないものです。でも、そのためには自分の事情を脇に置く必要があるわけです。

 ロールズは、この状態を原初状態と呼びます。そしてここから正義を判断していくのです。一言でいうと、一番困っている人を有利に扱う行為こそが正義にかなうということです。

ビジネス思考への応用

 無知のヴェールは、物事を疑うためのツールとして応用できます。目の前で展開している現象は間違っているかもしれないと、自分の頭を初期化するために使えるのです。自分の個別の情報を遮断するというのは、まさに頭の初期化ですから。

 人間というのは自分の事情をまず考え、しかもそれを過大に重視するものです。ある意味で防衛本能なのかもしれませんが、それは必ずしも正しい判断とは限らないのです。ですから、その部分をいったん取り去れば、相当客観的に物事を判断できるようになるのです。無知のヴェールはそこのところをうまく突いているといえます。

 ビジネスシーンでは、常に事態を客観的にとらえることが求められます。その際、無知のヴェールの発想が使えるのではないでしょうか。

思考法としての「唯名論」


 あらゆる物に広く及ぶ共通の性質を普遍、他のものとは異なる性質を特殊といいます。この普遍と特殊という2つの概念をめぐって出てきた理論が唯名論です。普遍と特殊の関係については、中世ヨーロッパの時代に、「普遍論争」と呼ばれる議論がありました。
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