『ビジネスエリートのための!リベラルアーツ 哲学』
[著]小川仁志
[発行]すばる舎
◆9・11後の世界
近代以前、西洋社会はキリスト教の影響のもとにあったといっていいだろう。ところが近代化が進むにつれて、あたかも魔法が解けるかのように、宗教の影響力は陰りを見せていった。その状況を社会学者のマックス・ウェーバーは、「脱魔術化」という言葉で表現した。
実際、西洋社会はいったんは世俗化の方向に向かったかのように見えた。ところが、今まったく逆の現象が生じているのである。グローバル化が進展する21世紀、宗教が再び力を盛り返し、「再魔術化」とも呼ぶべき事態が生じている。その21世紀の入り口にあたる2001年9月11日にアメリカで起きた同時多発テロは、そうした再魔術化の時代の負の側面を象徴するかのような出来事だったといっていいだろう。
ただし、再魔術化といっても、単に近代以前の状況に後戻りしているという話ではない。ヨーロッパのキリスト教徒は減っているが、その代わりイスラム教徒が増えているのだ。