読みたいトコだけ買える本。
犬耳書店
初めての方へ 記事一覧 無料登録 ログイン

犬耳書店はRenta!へ統合いたします

(2021/11/26 追記)

犬耳書店の作品をRenta!に順次移行します。
詳しくはこちらでご確認いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

0
-1
kiji
0
1
1226887
0
池上彰の「天皇とは何ですか?」
2
0
0
0
0
0
0
政治・社会
お気に入りとは?

お気に入りボタンを押すとお気に入りリストにこのページが追加されます。興味のあるページ・気になったページを後から確認するのに便利です。

お気に入り お気に入り
はじめに なぜ天皇と皇室について知る必要があるのか

『池上彰の「天皇とは何ですか?」』
[著]池上彰 [発行]PHP研究所


読了目安時間:5分
この記事が役に立った
0
| |
文字サイズ

「生前退位」の報せをきっかけに「天皇のお務め」を考える



 二〇一六年七月十三日、NHKの「ニュース7」は、番組冒頭で、天皇陛下が天皇の位を生前に皇太子に譲りたいという意向を宮内庁関係者に示されている、というスクープを報じました。


 このスクープの後を追うかたちで、翌日の新聞各紙も「生前退位」を大きな見出しとともに報じています。皇后陛下は、この「生前退位」という見出しを見て、大きな衝撃を感じられたそうです。


 二〇一六年十月二十日、宮内記者会での質問に対して「新聞の一面に『生前退位』という大きな活字を見た時の衝撃は大きなものでした。それまで私は、歴史の書物の中でもこうした表現に接したことが一度もなかったので、一瞬驚きと共に痛みを覚えたのかもしれません。私の感じ過ぎであったかもしれません」と回答を寄せています。


 そのため、それ以降は、マスコミ各社は「生前退位」という表現を使わないようになり、「譲位」という言葉を使うようになりました。


 二〇一六年八月八日、宮内庁は「象徴としてのお務めについての天皇陛下のおことば」と題したビデオメッセージを発表しました。私たちの多くは、その内容を見たり読んだりして、天皇陛下のお務めの負担の大きさにあらためて気付かされました。


 確かにこれまでも、天皇陛下と皇后陛下が被災地を慰問されるお姿は何度となく報道されました。ご高齢の身であることを考えれば、大きなご負担がかかっていることはなんとなくわかっていた。でも、そういった務めが果たせなくなりそうだから、もう譲位をしたほうがいいというお気持ちを表明されたことで、私たちもあらためて「天皇のお務め」を考えるきっかけをもらったのです。


天皇は「日本国民統合の象徴」って、どういうこと?



 あなたも、学校の授業で日本国憲法について教わりましたよね。憲法には、「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」である、と記されています。でも、「日本国民統合の象徴」とはどういうことなのか? 私は子供の頃、よくわかりませんでした。「象徴」とは具体的にどういうことなんだろうか。憲法の字面だけを眺めていても、よくわかりません。


 私自身が「そういうことだったのか」と深く納得したのは、東日本大震災の直後、二〇一一年三月十六日に宮内庁が発表したビデオメッセージ「東北地方太平洋沖地震に関する天皇陛下のおことば」を見たときです。その一節を抜き出してみましょう。



  「現在、国を挙げての救援活動が進められていますが、厳しい寒さの中で、多くの人々が、食糧、飲料水、燃料などの不足により、極めて苦しい避難生活を余儀なくされています。その速やかな救済のために全力を挙げることにより、被災者の状況が少しでも好転し、人々の復興への希望につながっていくことを心から願わずにはいられません。そして、何にも増して、この大災害を生き抜き、被災者としての自らを励ましつつ、これからの日々を生きようとしている人々の雄々しさに深く胸を打たれています」



 このビデオメッセージは、天皇陛下ご本人の強いご希望で出されたといいます。ここで語られているように、東日本大震災直後は、日本中の人々が衝撃を受け、大勢の人が嘆き悲しんでいました。


 そういう状況の真っ只中で、天皇陛下が国民に「復興への希望」を呼びかけられている。苦難をみんなで分かち合い、希望を捨てずに復興の道のりを歩もうと語られている。それを見て、「ああ、これが天皇の役割なんだ。象徴ということなんだ」ということが直感的にわかりました。


天皇や皇室について知ることは日本がどういう国か考えること



 でも、私たちは天皇や皇室について、まだまだ知らないことが数多くあります。憲法の中で、天皇のお務めはどのように規定されているのか。海外の王室と比べて、どこが似ていてどこが違うのか。さまざまな時代で、天皇はどういう存在だったのか。


 このように、天皇や皇室について知ることは、憲法や政治のあり方、日本の国柄や歴史を考えることでもあるのです。


 一九八九年一月七日に昭和天皇が亡くなり、一九八九年一月九日に(きん)(じよう)天皇が即位されたとき、お言葉を述べられました。それは次のように始まります。



  「(たい)(こう)天皇の崩御は、誠に哀痛の極みでありますが、日本国憲法及び皇室(てん)(ぱん)の定めるところにより、ここに、皇位を継承しました」



 私は、「日本国憲法及び皇室典範の定めるところにより」という一節を聞いて、なぜか衝撃を受けました。当たり前といえば当たり前ですが、びっくりしたのです。天皇陛下自身が、現在の日本国憲法に基づいて、天皇になったことを宣言している。憲法に対して、大変自覚的であることが伝わってきました。


 それ以降も、ことあるごとに、天皇陛下は日本国憲法について繰り返し語られています。つまり、天皇陛下ご自身が、憲法の(もと)での天皇のあり方をずっと考え続けてこられた。考え続けられただけでなく、被災地のご訪問や慰霊の旅などを通じて、実践もされてきたのです。


 二〇一九年四月三十日に今上天皇は退位され、平成の時代が終わり、新しい天皇が即位されます。また、政治の世界では、憲法改正についての議論も行われています。


 こうしたことをきっかけに、私たちもあらためて、天皇や皇室のあり方を考える必要があるでしょう。天皇や皇室について考えることは、私たちが暮らしている日本という国がどういう国なのかということを考えることにほかなりません。



  平成三十年六月

ジャーナリスト・名城大学教授 池上彰 

この記事は役に立ちましたか?

役に立った
0
残り:0文字/本文:2292文字
この記事を買った人はこれも買っています
      この記事を収録している本
      この本で最も売れている記事
      レビューを書くレビューを書く

      レビューを書いてポイントゲット!【詳細はこちら】

      この本の目次