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(2021/11/26 追記)

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私たちは生きづらさを抱えている 発達障害じゃない人に伝えたい当事者の本音
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くらし
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はじめに

『私たちは生きづらさを抱えている 発達障害じゃない人に伝えたい当事者の本音』
[著]姫野桂 [監修]五十嵐良雄(メディカルケア大手町 院長) [発行]イースト・プレス


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「姫野さん、軽くアスペ入ってますよね?」


 それはとあるカウンセラーを取材した帰り際、事務所の玄関で靴を履いていたときに投げかけられた言葉だった。一瞬言葉を失った。「アスペ」とはかつて「アスペルガー症候群」と呼ばれ、現在は「自閉スペクトラム症」と呼ばれている発達障害の俗称だ。


 私は幼い頃から常に浮いていた。基本的に21時以降テレビも自由に観られない家庭だったので、話題の番組やタレントの名前もよく知らず、クラスの子たちの話題についていけなかった。小学生の頃、ひとりっ子なのは30人ほどのクラスで自分だけだった。ひとりっ子は周りの大人たちからワガママだと思われてしまう……。そんな不安から、親に欲しいものを強くねだった記憶がない。自分の意思を殺して親の期待に応えようと常に気を張っていた。


 学年が上がるにつれて、どんどんクラスでの居場所がなくなっていった。他の子たちは昼休みに外でドッジボールや鬼ごっこをして、楽しく遊びながらコミュニケーションを取っているように見えたが、私はひとり教室で本を読むほうが楽しかった。自分は普通の人ができる普通のコミュニケーションが取れていないように思えた。中高になるとその傾向はさらに顕著となり、テンション高くおしゃべりに興じるギャルっぽい女子たちに混ざれなかった。


 のちに、これがいわゆる「生きづらさ」というものだと知った。特に、大学3年生の頃の就職活動では大いにつまずいた。みんなと同じような色・デザインのリクルートスーツを着て、黒染めした髪の毛をひっつめ、楽しくもないのに面接官に笑顔を向け、偽りの自分を演じなければならないのに耐えきれず、すぐに就活をやめた。でも、さすがに卒業式が近づいてきたところでまずいと思い、就活を再開。そして、卒業式2週間前に内定が出た企業に滑り込んだ。


 入社してもやはり、私は浮いていた。組織で働くことに適応できず、月曜日に行われる朝礼では毎週倒れていた。貧血持ちではないので、精神的なストレスから倒れていたように思う。毎日、会社を辞めたいという思いしかなかった。それでも3年は続けないと転職に不利になる。そう信じ込んでいた。なんとか3年間の勤務を全うし、退職。大学時代に出版社でアルバイトをしていたこともあり、フリーライターへ転身した。この仕事ならば私はうまく適応できた。取材や打ち合わせがない日だと、1日誰とも会話しない日があるのも楽だったし、締切に間に合いさえすればマイペースに仕事ができる点も向いていた。もしかすると自分は発達障害なのではないか。会社員とフリーランスの両方を経験してから、そう疑うようになった。


 発達障害には独自のルールを持っていたりコミュニケーションに問題があったりするASD(自閉スペクトラム症/旧・アスペルガー症候群)、不注意や多動、衝動性のあるADHD(注意欠如・多動性障害)、知的な遅れがないのに読み書きや計算が困難なLD(学習障害)の大きく分けて3種類ある。また、この中の2種類、または3種類が併存しているケースも珍しくない。


 私の場合、集団になじめないことからASD、極端に計算ができないことからLDにあたるのではないかと思い、ネットで発達障害のチェックリストを見てみると、ASDに関しては3分の1ほど当てはまるサイトもあれば、半分ほどあてはまるサイトもあった。病院で正式に検査をしてみたいと思ったが、精神科や心療内科に行くのは少し抵抗があり、自己診断のまま放置していた。


 発達障害の人は、遅刻やケアレスミス、失言が多い、抽象的な表現が伝わらない、空気が読めないといった特性があることから、定型発達(健常者)の人に「困った人」と思われがちだ。そして、仕事においてもプライベートにおいても、彼らをどう扱えばいいのか悩む。一方、当事者も「自分は周りに迷惑ばかりかけているのではないか」と悩む。どうすれば当事者と定型発達の人との溝を埋められるのかを探りたい。また、それは発達障害ではないかと疑う私自身の生きやすさにもつながるかもしれない。


 そこで、発達障害の特性による生きづらさをテーマに、当事者を取材することにした。取材を進めていくと、彼らの生きづらさがリアルに洗い出され、その重みに大きなショックを受けることもあった。


 当事者の悩みで一番多かったのが、マルチタスクが苦手だったり、職場の人と良好なコミュニケーションが取れなかったりして、仕事が続かないこと。次いで、二次障害によるうつ病や睡眠障害、自律神経失調症、発達障害の特性により引き起こす可能性のあるギャンブル依存症や買い物依存症、性依存症などだった。体調が悪くて病院を受診したら、その体調不良は発達障害が引き起こした二次障害だと判明したケースも珍しくなかった。


 この本により、当事者の現状や本音が少しでも多くの人に誤解なく伝わり、生きづらさの緩和への道が開ければと思う。

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